おジャ魔女どれみNEXT
第1話「どれみの彼氏」
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「でもさ、小泉は木村目当てで、来てるんだろ」
 伊藤はスタンドに小泉まりなの姿を見つけて、木村に言った。
「えっ、何を言い出すんだっ…って、ほら春風も来てるじゃないか、小竹ぇ」
 木村は真っ赤になって、小竹に話をふるが、小竹は無言でスタンドに赤いお団子を探すだけだった。
「…?」
 木村と伊藤は首を傾げる。

 どれみは遅れてやって来て、まりなの隣に腰を下ろした。
「まりなちゃん、試合はどーなってるの」
「えっ、え〜っと」
 まりなは突然聞かれて、スコアボードを目で探していた。視線はずっとベンチの方だったようだ。
「なるほどね〜…まあ、美空中のゴールは守護神大河内先輩がいるからね」
 大河内は本大会無失点で来ている無敵のゴールキーパーだった。

 どれみは飲み物を買いに行って、トイレに来ていた小竹とばったり会った。
「小竹ぇ〜、応援ご苦労さん」
「は…春風こそな」
 小竹は素っ気無く答えた。
「前から聞こうと思ってたんだけどさ、なんで春風なの?そりゃあ“どじみ”よりはマシだけどさ」
「中学に入っても“どじみ”じゃあなって思ってさ」
 小竹は照れながら言う。
「あんたはぽっぷかい!…なんか、最近、あんたさ、らしくないって言うか、なんて言うか」
「何だよそれ、意味わかんね−よ。それにお前の方がよっぽどらしくねーぜ」
 小竹は言い返した。
「ナージャとぉ…小竹もしかして、ヤキモチ焼いてるの、私と先輩が付き合っているから…。はづきちゃんが言ってたけど、男子校や男子系のクラブには良くあるって…先輩カッコ良いからさ」
 どれみはニヤニヤ笑いながら言う。
「何、言ってんだよ」
 小竹はそう言い放って行ってしまった。
「…やっぱり変だよ、小竹」
 どれみは去って行く小竹の背番号をしばらく見つめていた。

 その日、美空中は優勝して、全国大会に駒を進めた。

「美空中サッカー部、全国大会に出るんですって」
 翌日、夏休みではづきはどれみの家に遊びに来ていた。
「うん。すっごいでしょ」
 はづきはちょっと間をおいて、小声で尋ねた。
「そのサッカー部の3年生の人と付き合ってるんですって」
「えっ、はづきちゃんどうしてそれを…」
 はづきは眼鏡を光らせた。
「私の情報網を侮らないでよ。おほほほほーっ」
 情報網と言っても、島倉の情報が玉木を通じて漏れただけなのだが…。
「どれみちゃん、失恋記録を更新中ということも知っているわ。がんばってどれみちゃん!」
「…はづきちゃん、どっちをがんばれと言ってるの?」
 はづきは冷汗をかきながら、
「もちろん、どれみちゃんの恋愛がうまく行くようによ」
「ふーん、てっきり、記録更新かと思ちゃった」

 おんぷは数人のスタッフを引き連れて、大阪の街を歩いていた。スタッフの一人が口にした。
「本当にこの辺に、凄く美味しいたこ焼を作る少女がいるんですか?」
「ええ、私を信じて、取材のアポは取ってあるわ」
 おんぷは自信たっぷりに言い返した。

「でもね、先輩最近忙しそうで、ろくに会ってないんだ。会えないとちょっと淋しいかもって…心が冷えるって言うか、離れるって言うか…」
「どれみちゃん、すっかり恋する女の子なのね」
 はづきは意外そうに言う。
「でもね、今度、一緒におんぷちゃんのコンサートに行くんだよ」
「…おんぷちゃんの?」
 嬉しそうに話すどれみにはづきは不思議そうに聞き返した。
「うん、先輩と話が合う数少ない話題なんだ、おんぷちゃんの事は」
「そーなんだ。でもそれって…」
 はづきは何か言おうとしたが、どれみは時計を見て、急いでテレビをつけた。
「どうしたの?どれみちゃん」
「おんぷちゃんがテレビに出るんだよ。これは絶対見てって言われてるんだよ」
 ブラウン管におんぷが映る。
『今日の“隣の夕食”は瀬川おんぷがお送りします。今日は凄い少女を紹介します』
 どうやら一般家庭の夕食を紹介する番組のようだ。おんぷは訪問する家のドアをあけた。
『うっわ、マジぃ?おんぷちゃんやぁ〜』
 テレビに映ったエプロン姿の少女はわざとらしく驚いていた。
「あいちゃんだ」
「あいちゃんだわ」
 どれみとはづきは驚いた。
『妹尾あいこちゃんは近所で有名なプロ顔負けのたこ焼職人なんです。では焼いてもらいましょう』
 と、おんぷが言うと、あいこは巧みに美味しそうなたこ焼を焼いていく。
「あいちゃん、元気そうだね」
「うん」
 テレビ越しに親友の元気そうな姿を見た二人は頷きあった。

 土曜日。昼過ぎにオシャレをしたどれみとぽっぷが家を飛び出した。
「ぽっぷ、どーしたのその格好?」
「お姉ちゃんこそ?」
 姉妹はお互いに同じ質問をしていた。
「ふふふっ、おねーちゃんはこれからデートなのさっ!」
「お姉ちゃんに彼氏なんて…その人は知らないんだ、お姉ちゃんの本性を…」
 ぽっぷはやれやれと言う感じで呟いた。
「ぽっぷこそ、きみたか君がこっちに遊びに来ただけで、それですかい?」
「ち、ちがうよっ」
 どれみの言葉にぽっぷは真っ赤になって否定した。
「今日は…きみたかが帰ってくるけど…関係無いもん…この服を着たかっただけで…」
 必死に弁解するぽっぷ。でもどれみはすでに出かけてしまっていた。