おジャ魔女どれみNEXT
第4話「はづきの不安」
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 カレン女学院の通学路。オレンジ大きなリボンと眼鏡が特徴の上品な少女、藤原はづきは一人下校していた。川沿いに通りかかったとき、川原を見渡して溜息をついた。そしてそんな自分に気が付いてはっとする。
「まさる君を探している。そして居ないだけでこんなに淋しい気持ちになるなんて…」
 そこは矢田まさるのトランペットの練習の場だった。あまり上手いとは言えない、でもはづきにとっては味のあるあの音色は聞こえてこなかった。小学生から中学生になって、制服に身を包むようになった少年少女たちは、恋愛という事に積極的になりつつあった。まして、はづきが通っているのは女子校である。女子だけなので自然と話題はそういう方向に行く。それに影響されてか、すこし恋愛について気にし始めている自分を最近、はづきは感じていた。。
「藤原さんじゃない〜」
 バイクのエンジン音と共に、やさしい声がかけられてきた。はづきは振り返った。そこには紫のバイクとライダースーツの女性と、その後にちょこんと座っている女性が居た。声をかけて来たのは後の女性だ。はづきはその人物に言った。
「…女王様」
「ここでは、ゆき先生ですよ」
 ゆき先生は美空第一小の保険医を仮の姿とし、その実態は魔女界の女王だった。と言っても、女王の座は近い将来、はづき達が3年間育てたハナという魔女に譲る事になっている。
「ゆき先生、そちらの方は?」
 はづきはバイクを運転している女性の事を尋ねる。ゆき先生といえば、同じく美空第一小の教師だった関先生のバイクに乗せてもらっていた印象の強いはづきはつい尋ねてしまう。
「マジョリンよ」
 言われて、バイクに跨っていた人物がヘルメットを取った。キリリと引き締まったその顔はマジョリンに間違いない。
「関先生がアメリカに行ってしまって、通学に困っていたので、来てもらっちゃいました」
 ゆき先生は冗談ぽっく言った。はづきはそんなゆき先生に笑みをこぼす。
「女王様、参りますよ…」
 マジョリンは言う。ゆき先生は空かさず注意する。
「ここでは“ゆき”ですよ」
 マジョリンは困った顔を隠すようにヘルメットを被った。
「藤原さん、美空小の保健室にまだ居ますから、たまには遊びに来てくださいね〜」
 ゆき先生の言葉の最後の方がドップラー効果を起しながら、バイクは走り去っていった。
「マジョリンさんも大変ね」
 はづきは嬉しそうに微笑んだ。

 ゆき先生とわかれてしばらく歩いた後、はづきの足は自然とある場所に向っていた。ふと思うとついつい行ってしまう。はづき…いやはづき達にとって、とても大事な場所。その場所はいまだ魔法がかけられているかの様に、はづきを引き付けた。その場所はかつてはづき達のMAHO堂があった場所。古いクラシックな建物が主の居ない淋しさを強調している。
「今では、美空町で一番大事な場所ね」
 はづきはその建物を見つめながら呟いた。すると視界の隅に赤いお団子が入ってきた。MAHO堂の裏庭から出てきたどれみだった。
「はづきちゃんも、たまに来てたんだね」
 どれみは自分も同じだよと主張した。
「何も無いって分っていても、つい、足がここに…」
 はづきはどれみを見ながら嬉しそうに言う。どれみも同じだよと頷く。MAHO堂は面する道から少し階段で降りた所にある。二人はその階段に腰を下ろした。
「はづきちゃん、ひとつ聞いてもいいかな…」
「…何?」
 どれみの問いかけにはづきは耳を傾けるが、言葉の続きは一行に出てこない。どれみは言いにくそうに苦しんでいる。そんなどれみをはづきは心配する。
「どれみちゃん、何かあったのっ!」
「え、いや…その、そんな大した事では……」
 どれみはしどろもどろだ。その態度ではづきはさらに心配する。これ以上、変な誤解で親友に心配させてはいけない…どれみは意を決して尋ねた。
「はづきちゃんは矢田君と付き合っている…で、ファイナルアンサー?」
 どれみは某クイズ番組の真似をしてみて誤魔化しつつ尋ねてみた。いきなりの予想外の質問にはづきは困惑する。そして答えは…。
「どれみちゃん、どうしてそんな事、聞くの」
 質問に対する動機の問い掛けだった。しおりの名前は出さないように言われているどれみは答えに困った。その態度がはづきに誤解を与えた。
「どれみちゃん、もしかして…矢田君の事……わ、私と矢田君はただの幼馴染だから…私に気を使う必要は無いのよ…どれみちゃん」
 親友の好きな人は自分の好きな人と同じ…少女漫画で良くある残酷なパターンにはづきは一人酔っていた。
「えっ…えっえ〜」
 どれみはどう答えて良いのかわからず混乱していた。これからどれみはどう行動すれば良いのか、さっぱりだった。

 しおりは一人、家路についていた。
「でも、私はどうしたいんだろう」
 しおりは呟いた。どれみに相談をもちかけたものの、それで矢田と付き合うとか、そこまで考えていなかったのだ。だた好きで、気になる。この気持ちの扱い方にまだ不慣れだったのだ。ふと顔を上げると何故か無駄にゴージャス?な少女が目に入ってきた。カレン女学院の制服を着こなしているその少女は玉木麗香。しおり達と同じ美空第一小の卒業生だった。麗香もしおりに気がついて、駆け寄ってきた。
「中山さん、お久しぶりですわ。お元気ですの?」
「玉木さん」
 高飛車でわがままな麗香と控えめで大人しいしおり。ある意味対極にある二人だが、意外と仲が良かった。小3の時、一緒に家出を企てるくらい。
「中山さん、どう致しましたの?具合でも悪いんですの?」
 しおりが悩んでいる事を見抜いた麗香は心配そうに尋ねてくる。しおりは麗香に胸に詰まる想いを打ち明けた。