おジャ魔女どれみNEXT
第5話「はづきの答え」
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「兄貴、本当に取り次いでもらえるんスか?」
「知るかよっ!」
 広い玄関先で、訪ねてきた二人組、“パパイヤ兄弟”はおどおどしていた。しばらくしてはづきがやってきた。
「お久しぶりです」
 はづきは二人に挨拶した。後で殺気だった目でばあやが睨んでいる。まだ二人を信用していないようだ。
「はづきお嬢様に何かあったら……」
 パパイヤ兄弟の二人はその老人に恐怖を感じていた。

 午前10時。美空駅。大きな時計台の前で待っている少女、中山しおりの所に矢田まさるが走ってやってきた。
「遅れてスマン…って時間ピッタリじゃねーか。お前、何時から待っていたんだ?」
 矢田は息を切らせながら尋ねる。
「ううん、いいの。それより、これからどうするの?」
 しおりは不安そうに尋ねる。矢田からは時間と場所しか聞いていないから。手ぶらの矢田は無造作にポケット探りながら言う。
「いや、特に考えていなかったんだけど…これが手に入ったから…嫌か?」
 取り出したしわしわの遊園地のチケットをしおりに見せて矢田は言った。しおりは嬉しそうに頷く。
「それじゃ、急ごう。電車がくる」
 二人は切符売り場に向った。

 はづきはパパイヤ兄の運転する車の助手席に座っていた。後ろの席のパパイヤ弟が乗り出してきて呟く。
「こうしていると思いだしますね…あの日のこと…あの日が俺達の再出発の日だったから」
「私を誘拐しようとした日ですね」
 はづきはさらっと言う。
「ははは…それは勘弁してくれよ〜」
 パパイヤ兄は力無く笑う。4年前、はづきは当時売れないお笑いコンビだったこの二人に誘拐されかけた事があった。ちなみに二人はその時、はづきに説得され、もう一度お笑いの道を目指す事にしたのだ。そして最近ではそこそこテレビに映るのを見かけるぐらいになっていた。
「実は、今日は俺達のステージを…あんたに見て欲しくて…」
 パパイヤ兄は照れながら言う。
「遊園地の特設ステージでヒーローショーとのコラボレーションなんスけどね」
 パパイヤ弟が説明した。

 そこは、老舗の遊園地。どれみ達も何度か来た事がある定番の行楽地だった。どれみと小竹は、ピッタリと矢田としおりの後をつけていた。
「言っとくけどね、これは大親友のはづきちゃんの為なんだからね!」
 どれみは小声で小竹に念を押した。
「それにしても、あの二人、何にも会話ねーな」
 小竹は、矢田としおりを見て呟いた。
「…まぁ、矢田君だモンね」
 どれみは何となく納得した。矢田としおりは電車に乗って、ここに着くまでほとんど会話が無かった。しおりは照れて頬を赤く染め、矢田はそっぽを向いてしまっている。
「気の利いた言葉でもかけてやれば良いのにさ」
「小竹なら何ていうの?」
 呟いた小竹に、どれみから質問が飛ぶ。小竹は取り乱した。
「何だよ、いきなりっ…」
「……もし、私とデートしているとしたら…何て言うの?」
 どれみはなおも尋ねてくる。小竹は思い切って口に出した。
「……牛丼食べに行こっ」
 その言葉のロマンの無さにどれみは呆れて、一人で先へと行ってしまった。
「…小竹の馬鹿っ」

 矢田としおりはいくつかの乗り物に乗った所だった。心臓の弱いしおりは激しい動きを伴う乗り物は禁物だった。矢田はさりげなく、そのような点で気を使っていた。しかし基本形が無愛想な矢田である。会話が少ない分、しおりはいろいろ想像してしまう。しおりは矢田の気遣いに気付いていた。しかし、終始無愛想にムッとしている矢田の顔を見ているうちに…。
“私と一緒じゃ、楽しく無いのかな…”
 と不安を募らせていった。しおりは気まずさを感じ、辛そうな表情を見せると矢田はすぐに気がついてきた。
「…疲れたのか?少し休むか」
 と言って、有無を言わさずベンチの方へ向かって行った。その先にはパイプ椅子がたくさん並んでいて、その一角に二人は腰を下ろした。
「何か、飲み物買ってくる」
 矢田はそう言って、席を立って、自販機を探しに行ってしまった。そんな矢田をしおりは見つめる事しかできない自分に気がついた。
“…私、矢田君に甘えているの”

『コチラ林野、ターゲットは催し物コーナーの椅子に座っている模様、あと、長谷部君のペアと連絡つかないんだが…』
 どれみの携帯電話越しに林野の声がする。どれみと林野は携帯で状況確認をしていた。
「さぁ…どうしたんだろうね」
 どれみはにやにやしながら答える。
『まったく、自分の役割を果たして貰わないと困る!』
「まぁ、まぁ…お堅い事言いなさんなって」
 どれみは林野を諭して電話を切った。
「お前、中学生なのに携帯なんて持ってんだな…」
 小竹が意外そうに言う。
「へへんっ、夏前に買ったのさっ。でもさ…今時、小学生でも持ってるし」
 どれみはピンク色の可愛らしい携帯を小竹に見せびらかした。サッカー一筋の小竹は携帯などに興味が無かったので物珍しそうに見ていた。そして疑い深く聞いてきた。
「それって、便利なのか?」
「そりゃ、今だって、かよちゃん達と連絡とれた訳だし…」
 どれみは言いながら苦笑いした。尾行なんてそうそうするものじゃないから。さて、行方を晦ました長谷部とむつむは、お互いの度胸比べと称して、絶叫系マシンをはしごしていた。二人とも当初の目的を忘れて遊んでいた。
「女だからって…私は長谷部君には負けないっ!」
「俺に勝とうなんて、10年早いんだよ〜」
 二人は次のアトラクションを目指した。