おジャ魔女どれみNEXT
第11話「あいこの法則」
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「あなた…あいかが分析した通りのお節介な人みたいね」
 振り向かずりずむは言う。
「確かに…白鳥さんが言うんやから、間違いない思うで。でもそれがあたしのとりえやと思うてるから」
「あなたに話す事は何も…」
「あいちゅゎ〜ん♪」
 りずむの言葉は、いきなり叫びながら乱入してきた信子に中断された。信子はそのままあいこに抱きついて…というか首にぶら下がる。
「信ちゃんやん…どないし……苦しいって、死んでしまう」
 信子は未練タラタラな感じにあいこから離れて、
「死ぬほど逢いたいって気持ちを表現したつ・も・りっ♪」
 そんな二人のやり取りを無視してりずむは帰って行った。
「こんにちわ」
 校門のところにいたおんぷは、すれ違いざまにりずむに挨拶する。りずむはそれを無視する。
「ねぇ…誰かを憎みたい気持ちはわかるけど、冷静に考えてみて、私達を憎むのは筋違いじゃないの?あなた達は状況に流されてるだけで…何もしていないんじゃないの」
 おんぷはりずむの背中に穏やかに告げた。
「簡単に言わないでよっ!」
 りずむは感情的に声をあげる。
「確かに簡単じゃないわ…でも、今のままじゃ、前に進めないんじゃないの」
「辞めたあなたには関係無い話のはずなのに…なんでそんな事を…」
「私もあいちゃんと同じでお節介みたいね」
 りずむはこれ以上、何も言わずに帰って行った。二人の異質なやり取りをおんぷのとなりでみほはおどおどしながら聞いていた。そんなみほの肩を叩いておんぷは言う。
「さぁ、あいちゃんの所に行きましょ」

「えっ…あたしとおんぷちゃんをくっつけたような主人公で映画を作るやて…」
 帰りの電車の中であいこは驚いて声をあげた。
「正確には、あいちゃん80%、おんぷちゃん20%くらいの割合になるわ」
 信子が説明する。その隣で、車内の会話の様子をみほがスケッチしている。
「つまり、今回の役作りは、私がどれだけあいちゃんを表現できるかって事なの」
 おんぷが言う。
「それで、大阪までわざわざ来たっちゅー訳なんや」
「24時間密着で、ばっちり、つかむで、あいちゃんの法則」
 信子は燃えていた。しかしそのベクトルの向きは微妙だった。
「…法則って」
 あいこは苦笑いした。でも嬉しそうだった。

 あいこ達は家に帰ってきた。
「おジャ魔しまーす」
「おんぷちゃん…」
 あいこはおんぷに微笑んでみる。あいこは3人を縁側に案内する。
「おじいちゃん」
「おおっ、おかえりあいこ。幸治君から聞いている、今日、友達が泊まりにくるってな…その子たちかの?」
 あいこの祖父の惣一郎は優しく話しかけてる。
「そやねん、おじいちゃんも知ってる思う、瀬川おんぷちゃんと、美空町で親友やった、横川信子ちゃんと丸山みほちゃんや」
「こんにちわ」
 3人は挨拶する。
「よーきたな。わしの事はええから、あいこと遊んでやってくれ」
「うん。おじいちゃん、何かあったら呼んでな」
 そう言って、あいこ達はあいこの部屋に行く。
「ここはな、お母ちゃんが子供の頃使うてた部屋やねんて」
「へぇ〜へぇ〜」
 信子はへぇへぇ言いながら、部屋を眺める。少し殺風景だったが普通の女の子部屋だった。
「さぁ、おんぷちゃん、みほみほ、取材を始めるわよ!私達は空気だと思って、普段どおりの生活を見せてね」
 信子は言いながら、メモ帳に凄い勢いでメモを取り始める。みほはスケッチブックを広げて、鉛筆を握り締めている。おんぷはビデオカメラを取り出して撮影を始める。
「……普段の生活って…無理やろ…この状況で」
 あいこはぼやいた。

「ちょっとごめんな…おじいちゃんの様子みてくるわ」
 あいこは部屋を出た。信子はメモの手を止めて溜息をつく。
「どうしたの?信子ちゃん」
 おんぷが尋ねる。
「知れば知るほど…あいちゃんって凄いなって」
「うん、私も介護のお仕事はテレビの中でしか知らないけど…あいちゃん、ちゃんとこなしているみたいね…私達と同い年なのにね…でも、あいちゃんって昔から家庭的な所あったし…本人は母親が居ないからだって、当時は言っていたけど…やっぱりそれって、あいちゃんの良さだと思う」
 いつになく熱く語るおんぷに信子は同意するように頷きまくる。
「私…“カリ鉄”であいちゃんの表面部分しか表現してなかったんじゃ無いかって…」
「そんな事無いよ、信ちゃんは独自の分析で妹尾さんを完璧に描いているわ」
 弱気になっていた信子にみほが言う。
「信子ちゃんは、自分の中のあいちゃんをキチンと描けていたと思うわ。そして私がオーディションで演じたのは私の中のあいちゃん。もちろんみほちゃんの中、みほちゃんの描くマンガにもみほちゃんだけのあいちゃんがいる。そして今、目の前にいるのは…本物のあいちゃん。それをもっと知る為にここに居るんでしょ」
 おんぷは語った。そこにあいこが戻ってくる。
「何か、難しい話になってんなぁ〜」
 言葉と裏腹にあいこは嬉しそうだった。自分の事をこんなにも思ってくれる友達がいる事が誇らしかった。
「メモってる信ちゃん見て、思い出したんやけど、クラスメートで、白鳥あいかっていう凄く観察力と洞察力に優れた子がおんねん、その子があたしの事をノートにまとめてんねん…それを借りれたら、撮影に役に立つんとちゃうかな」
 おんぷは“あいか”という名前に反応する、あいこは時計に目をやって立ち上がった。
「そろそろ夕食の用意しないと…」
「手伝う」
 みほを先頭におんぷ達もついて行く。