おジャ魔女どれみNEXT
第12話「ぽっぷな応援」
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「行くよ、山本刑事っ」
「りょ、了解…って、ぽっぷちゃん?」
 車の助手席でぽっぷは父の書いた本を鞄の中から取り出して見ている。その地図の描かれたページを山本刑事に見せる。
「一番近い川釣のスポットはここになると思う」
「ここに犯人がいる可能性が高いって事だね」
 こうして車はその地図に描かれた河川を目指した。

「もうすぐだからね」
 山本刑事は車を運転しながら言う。ぽっぷは言いにくそう言う。
「あのね…ゆき先生は、止めた方が良いと思うよ」
 さっきと反対に諦めろというぽっぷに山本刑事は驚く。
「あの人は……別の世界の人だよ」
 ぽっぷは呟く。この恋は実らないと確信しているのだ。ゆき先生が魔女で、しかも魔女界の前の女王である事を知っているから。
「そうか…俺なんかとじゃ別世界の人か……でも、諦めるなら、当たって砕けるさ」
「だから、砕けるのがわかっているなら止めた方が…」
「でも砕けない可能性だってあるだろ」
 さっきぽっぷに元気付けられた山本刑事は少し強気になっていた。
“どうしたら良いのよ〜”
 ぽっぷは心で叫んでいた。

 公園の入り口にバイクが止めてある。そして公園内のベンチではゆき先生が水晶玉を膝に乗せて、それに映る物を見つめていた。そこに缶コーヒーを買ってきたマジョリンが戻ってきた。コーヒーをゆき先生に手渡しながらマジョリンは問う。
「女王様、どうですか?」
 水晶玉には走っている乗用車が映ってる。
「ぽっぷちゃんと山本刑事が何かを掴んだようです。北の方へ向っています」
「まさか、奴の潜伏場所を」
 マジョリンは興奮して言う。
「私達も行きましょう」
「はっ」
 二人は公園を後にしてバイクに跨る。

「でも、河って結構長いけど…これを全部探る訳?」
「ううん、大まかにこの河には4つの大きなスポットがあるから、それを順番に行けば、きっと」
 ぽっぷは本を見ながら山本刑事に言う。車はもうすぐ、一つ目のスポットに到着しようとしていた。

 河の中流の一つ目のポイント。山本刑事はそこで釣人に聞き込みをしていた。ぽっぷは車の側で釣場の様子を見ていた。そこに二人乗りの紫のバイクがやってきた。
「ゆき先生とマジョリン…釣ですか?」
 ぽっぷは意外そうに言う。
「ぽっぷちゃん、窃盗犯の手がかりは掴めましたか?」
 ゆき先生は尋ねる。
「えっ…ゆき先生も何か盗まれたんですか?」
「いえ、違います。この件には…」
「マジョリン!あのねぽっぷちゃん、そうじゃないんだけど、ぽっぷちゃんもこんな寄り道してると家の人が心配しますよ。先生も、もう行きますから」
 ゆき先生はマジョリンの言葉を遮って言い、バイクの方へ戻っていく。
「マジョリン、ぽっぷちゃんを巻き込んではいけません」
「はっ…女王様」
 二人はバイクでその場を去って行った。そこに山本刑事が戻ってくる。
「だめだ、手がかり無しだよ、次のスポットに急ごう」
 山本刑事とぽっぷは車に乗り込んだ。ぽっぷはさっきのマジョリンとゆき先生の態度をずっと考えていた。

 二つ目の釣スポット。そこには人影は無かった。
「ここには誰も居ないみたいだね」
「お父さんの本によると、そこを入ってちょっと行った先に超穴場があるって」
 ぽっぷは脇の山道を指差して言う。
「わかったよ、ちょっと確認してくる」
 山本刑事はそう言って、山道へ入っていく。ぽっぷもそれに続く。
「私も行く」
 山道を少し歩いた所には小さな湖があった。
「うわぁ〜、かわいい湖」
 ぽっぷは声をあげる。
「これは、穴場だね」
 山本は感心して言う。そして湖を見渡すと、その畔に一人、釣をしている黒マントの男性が居た。見るからに怪しい。ぽっぷは目を凝らしてその釣竿を見る。
「もう少し近くで見ないとわからないよ〜」
 という事で、二人は男の側まで行く事にした。
「どうですか、釣れますか?」
 山本刑事は何気なく尋ねる。
「う〜ん、朝から頑張ってますか、全然ですね〜」
 男が持っていたのは竹製の竿。そして手で持つ部分の側に英語のサインが書かれていた。それはぽっぷがたまに見た事がある、父の仕事部屋で父渓介が嬉しそうに磨いていた釣竿だった。
「間違いない」
 ぽっぷは小さく呟いた。それを聞いて山本刑事は警察手帳を取り出して、男に告げる。
「警察だ、その竿の事で少し聞きたい事がある」
「警察かっ」
 男は素早く立ち上がった。この時、ぽっぷは気が付いた。
“しまったぁ〜、なんでもっと早く気が付かなかったの〜”
 ぽっぷは心で後悔していた。そして叫んだ。
「山本刑事っ危ないっ!」
「えっ、何、ぽっぷちゃん」
 まるで痕跡を残さない犯行手口、そしてゆき先生達が動いている理由、男の格好。これらを総合すると、犯人は魔法使いという答えがぽっぷの頭に導き出された。そして自分達は人間、魔法を使われたら対抗でき無い。そう考えていると、男はお構いなしに指を弾いた。魔法が発動する。
「何だぁ〜」
 山本刑事は訳のもわからず、吹いてきた局地的な突風に一人吹飛ばされて、数メートル先に落下、気を失った。男はその間にゆうゆうと荷物をまとめて逃げる準備をしている。
「おじさん、魔法使いね」