おジャ魔女どれみNEXT
第13話「ハナハナ夢中」
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「人間達は魔法を手に入れようとするか、魔法を持つ者を利用しようとします。また魔女は魔法が使える事で人間に対する優越感を持つようになるでしょう。もちろん、人間、魔女共にすべての者がそうであるとは言えません。しかし、その様な者もいる事は確かのです。人間と魔女が付き合うには、この様な問題を乗り越えていかないとならないのです」
「だから…両方の世界が変わっていかないといけない…」
 ハナはどれみ達の言葉を思い出して呟いた。
「そうです」
 マジョリンはそう言って、議論の方へ目を移した。結局その日はどっちの陣営も多数決で過半数を得る事ができず結論は出なかった。
「なんで、決まらないの?」
 ハナの疑問にマジョリンが説明する。
「どちらでも良いという無関心の魔女が多いのだ。議会の決まりで過半数を超えないと可決されない事をいい事に、議論を引き伸ばそうとしてるのか」
 つまり意思表示の無い魔女が多く、賛成派も反対派も過半数の投票を得る事が出来ないのだった。
“カッ”
 マジョリンの隣で光が溢れている。
「マジョリン、お願いっ」
 13歳の姿になったハナがマジョリンに懇願する。

「では、あとは頼みます」
 マジョリンはマジョリカの家から帰ろうとする。
「待って、マジョリン」
 ララがマジョリンを引き止める。ララに後に3歳の姿で寝ているハナを抱いたマジョリカも出てくる。
「最近、ハナちゃん、家に帰ってきたら疲れてるみたいですぐに寝ちゃうんだけど…ハナちゃんは、マジョリン、あなたと何をしているの?」
 ララは心配でたまらない様子だった。
「きっと、あのコンパクトを使ったとしても、あの姿を維持するのは大変なんだろう…それなのに…」
 マジョリンはハナの寝顔に呟いた。
「マジョリン…話してくれんか」
 マジョリカの言葉にマジョリンは頷いて話し出した。
「ハナ女王は今の魔女界から魔女見習い制度を無くしたくないのだ…それで、魔女教育委員会の中立派と反対派の魔女一人一人とじかに会って、話して回っている。ご自分の考えを…」
「ハナちゃん…そんな事を…」
 ララは驚きと感心の表情でハナを見つめる。マジョリカも感慨深くハナを見つめて呟く。
「もう既に…立派に魔女界の未来を案じているのだな」
「おかげで、共感してくれた魔女も多い。おそらく次の議会では魔女見習い制度再開の方向で修正案が可決されるだろう」
 マジョリンも少し嬉しそうに言う。
「さすが…我等が娘」
 マジョリカは誇らしげに呟いた。
「……しかし、問題はそう容易いものでは無い。教育委員会で可決した案は元老院会議にかけられ、そこでの承諾がえられないと、実効権を得る事が出来ないのだ」
「でも、元老院は、どれみ達よりだから問題無いんじゃないの」
 ララが意外そうに言う。
「だと良いのだが…」
 マジョリンは小さく呟いた。

 数日後、王宮でハナは前の女王とバルコニーから見える魔女界の風景を眺めていた。
「ハナちゃん、最近、がんばってるようですね。マジョリンから聞いていますよ」
 前の女王の言葉にハナは首を傾げる。ハナにとってそれは当たり前の事だから。
「魔女見習い制度の存続…極端な言い方をすれば、女王であるハナちゃんの一声で成立させる事も可能なのです…でもハナちゃんはそれをしなかった。私はそれが凄く嬉しいのです」
「だって、大事な事はよぉ〜く話し合って多数決で決めなさいって関先生が言ってたもん」
 ハナの回答に友の名を聞いた前の女王は微笑んだ。
「そうですね」
 そこにマジョリンが駆け込んできた。
「魔女見習い制度の見直し法案、見習い制度の再開の方向で可決されました」
 それにハナと前の女王は顔を見合わせて喜んだ。そして前の女王は言う。
「マジョリン、すぐに元老院に通達、元老院会議を開きます」
 こうして、この議題は元老院の会議にかけられる事になった。

 ハナはコンパクトの力で13歳の姿になり、この元老会議に出席した。議題を持ち込んだマジョサリバンは会議場の中央に立ち、残り11人の元老院魔女達が乗った出窓の様な形の議席がその周りに浮いていた。前の女王とハナも一緒にその一つに乗っていた。
「長きに渡り魔女を苦しめてきた魔女ガエルの呪いが解け、一年が過ぎようとしている。それに伴い意味を見失っていた魔女見習い制度の今度の在り方について提案したく思く、魔女教育委員会はガイドライン作成した。詳しくは手元の資料をご覧頂きたい」
 元老院魔女達は事前に配られていた資料にこの場で再び目を通し始める。そして…。魔女幼稚園園長のマジョミラーが質問する。
「この資料には…見習い制度は以前のまま再開、状況に対応しながら改変を加えていくと書かれているが、魔女ガエルの呪いが無く。人間界との交流もほとんど無い現状で、どのように魔女見習いが生まれると言うのですか?」
「確かに魔女見習いの発生は極端に落ち込むだろうと予想される。しかし、今まで通り人間界で商売をする魔女も居るというのが現状。そんな魔女達が純粋に魔法や魔女に憧れる人間に出会った時、それに答える事ができる魔女界でありたいという願いを、この法案に込めている。そしてそれは将来、人間界と魔女界の潤滑油になれるような人材の育成という意味合いも担っていくと考えています」
 マジョサリバンは淡々と用意してあった感じの返答を述べていく。それに魔女問屋の元締めマジョドンが反論する。
「しかし…確かにここ数年は良い魔女見習いに恵まれていたと思う。しかし…いつまでもそんなに良質の魔女見習いが生まれるという保障は無いと思うのだ」
「マジョドン殿、仰る事は最もだが、相手を信じないと、我々も信じてもらえない事も確か…いずれ、人間界と交流を考えるのなら、今はリスクを負うことになるかもしれないが、信じるべきではないだろうか」
 魔女界最高のパテェシエ魔女のマジョバニラがマジョドンの意見に対抗した。