おジャ魔女どれみNEXT
第16話「結成!魔法研」
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「とは言うものの…どうやって勧誘したら良いのかな〜」
 どれみは魔法というテーマが特殊なので、勧誘方法が見つからないでいた。そんなどれみに声がかけられる。
「どれみちゃん、新しいクラブを立ち上げるんだって」
 それは長身にショートヘアの一見、美少年の様な少女、奥山なおみだった。
「奥山さん…も、新入生の勧誘?ラクロス部のエースなのに」
 どれみは奥山の様子を見て不思議そうに言う。奥山は苦笑いしながら答える。
「まぁ、そーいうのはエースも何も関係無いからね。で、どれみちゃんの所は新入生入った?」
 奥山はスポーツ万能で一年の時からレギュラー入りしていたラクロス部のエースだった。
「ううん、全然」
「私も」
 二人は苦笑いで顔を合わせる。どれみは奥山の持っているラクロスの競技に使われるクロスという先端にかごの様な物がついたスティックを眺めながら尋ねる。
「ラクロスって面白い?」
「うん、最高にっ。今度、オタカク女子と試合するから、見においでよ」
 奥山の言葉にどれみは頷いた。
「じゃ、お互いがんばろうね」
 奥山はそう言って、どれみから離れて行った。

 思い切って校舎の外に出て見たどれみは第2運動場の野球用のスペース横を歩いていた。
「春風さぁ〜ん」
 金網の向こうで白い野球ユニフォームの背の高い少年が手を振っている。
「高木君」
 どれみはその背の高い少年の名前を呼ぶ。同級生で野球部の高木まなぶだ。同じく同級生の神経質そうな眼鏡の少年…中島正義と小柄な3年生の平松部長もどれみの所へやってくる。どれみは3人を見渡して言う。
「野球部って、やっぱり3人なの?」
「ははは…やっぱり、キャッチボール部さ」
 どれみの問いに平松部長が力なく答える。
「春風っ、お前で良い、野球部に来てくれっ!」
 中島の独特のせっかちな口調で言ってくるが、どれみは首を振る。
「私は私の部があって、その部員集めしてるんだから。高木君達も部員集めなくっちゃ。きっと新入生で野球したい子いるよ」
「そうだよねっ」
 どれみの言葉に高木は嬉しそうに答えた。同時にやる気になった面々は、進入部員獲得に走っていく。
「私もがんばらないとっ」
 3人を見送った後、どれはそう呟いて歩き出す。しばらく歩くと、グランドの端の階段状の場所に人だかりが出来ているのに気がつく。何気なくそこに行ってみると…。
「オンドゥルルラギッタンディスカーッ」
「何言ってるのか、わかん無いよ」
 “バコッ”
 意味不明な言葉を叫んだ短髪の少年を顔立ちの良い美少年がハリセンで殴り倒した。これは杉山豊和と小倉けんじのコンビ“豊ちゃんケンちゃん”のドツキ漫才だった。その隣には、佐川ゆうじ、太田ゆたか、佐藤じゅんの新SOSトリオも控えている。彼らは半年くらい前から、お笑い研究部と言うクラブを設立していた。
「こんな部にこんなに人が集まっているなんて…何か悔しいかも」
 どれみは少し悔しさを感じながら、寒いギャグを連発する彼らに関わらない様に、その場を後にした。

 どれみはふと見上げた校舎の2階。そこに赤毛の少女の姿を見る。
「かよちゃんだ。あそこは…理科室…そっか、かよちゃんは天文部だっけ」
 それはどれみの親友の長門かよこだった。星が好きな彼女は天文部に所属していた。そんなかよこのいる教室を見上げているどれみの横を初々しい制服の一年生の女子達が通り過ぎていく。それに気がついたどれみは声をかけてみた。
「君達〜魔法使いや魔女って本当にいると思う?魔法の事を知れば、きっと生活がほんの少しだけ幸せになるよ」
「あの、私達、そーいうのはちょっと〜」
 一年の女子達は笑いを堪えながら早足で立ち去ろうとする。
「…って、もしかして変人扱い?」
 どれみは軽くショックを受けつつ呟く。そこに花壇に水を撒いていた黒髪の少女が話しかけてくる。園芸部の小泉まりなだ。
「どれみちゃん、何だか宗教みたいだよ」
「えっ…マジで。でも魔法って信じる信じないの世界だからね〜」
 どれみは苦笑いして答えた。どれみはお花に水を与えるまりなを見ながら尋ねる。
「まりなちゃんなら、何て勧誘する?」
 まりなは手を止めて、しばらく考えて…。
「お花…好きですか?」
 まりな真剣に言う。その仕草が物凄くはまっていて、どれみは見惚れてしまう。たまたまその横をランニングで通りかかったサッカー部の面々の中で何故か2年の木村だけ、顔を真っ赤にしていた。どうやらまりなの声が聞こえたらしい。それに気がついたまりなも顔を真っ赤にする。どれみはやれやれと言う感じにニヤニヤしつつ、まりなと別れた。

「そっか、好きこそ物の何とかって言うしね」
 その後、どれみは大勢の新入生に魔法は好きかと尋ねまくって、逃げられていた。

「魔法ってそんなに人気無いのかな〜」
 すっかり落ち込んだどれみが部室の旧校舎の三階の奥の部室へ戻ってくると、その室内に少女が一人、ポツンと座っていた。おかっぱ頭に丸眼鏡で背の低い大人しそうな少女だ。どれみは同級生であるその少女の名前を口にする。
「なつみちゃん」
 佐藤なつみ。家が教会で、何処と無くシスターって感じのする少女だった。
「春風さん、私、入るわ……魔法研」
 なつみの口から言葉がポツンと飛び出す。
「えっ、マジっすかぁ〜」
 どれみは嬉しさのあまり、なつみの手をとって飛び跳ねてしまう。
「あの〜すいません」
 そんなどれみの背後から、控えめな声がかけられる。どれみが振り返ると、そこには魔法研の3人目の部員となるっぽい下級生の女の子が立っていた。