おジャ魔女どれみNEXT
第17話「怪傑!魔法研」
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 放課後、旧校舎の3階一番奥の魔法研究会の部室では、5人の部員が全員揃っていて、部長のどれみが本日の活動内容について説明していた。
「実はお昼にカレン女学院に通っているはづきちゃんからメールが来たんだよ」
「…はづきちゃん?」
 りずみは“誰?”と言う感じに首を傾げた。一年生の冬野そらは思い出したように言う。
「どれみ先輩と一緒にMAHO堂を手伝っていた…確か、眼鏡の人ですね」
 魔法に興味があって何度もMAHO堂に通っていただけあって、そらは知っているようだ。どれみはそれに頷く。3年生の秋月めいはなるほどと頷く。そらの言葉にどれみとはづきが親友だと気が付いたのだった。一方、りずみははづきがどれみの魔女見習い仲間なのだと気が付いていた。どれみの同級生で同じ美空小出身の佐藤なつみには説明は無用だった。
「はづきちゃんからのメールには、クラスメートの伊集院さちこちゃんが最近、ストーカー被害に遭っているかもしれないので、調べて欲しいってお願いが書いてあったの」
 どれみは説明する。しかし即座にりずみが反論する。
「ここは探偵クラブじゃ無いでしょ」
「私も最初はそう思ったんだけどね」
 どれみはりずみの素早く鋭いツッコミに苦笑いしながら答える。そして真剣な表情を作って語りかける様にりずみに言う。
「でも、伊集院さんは同じ美空小の仲間なんだよ。やっぱり放っておけないよ」
「だけど、それは警察にでも頼めば済む事でしょ」
 りずみも引かない。
「伊集院さんは…事を荒立てたくないんだよ」
「だからって…何で、私達が春風さんのお節介に付き合わないといけないの?」
 りずみは少し怒った素振りで言い放つ。そこにめいがひょろっと口を挟んだ。
「別に問題無いんじゃないの?。この事件を私達“魔法研”のやり方で解決すれば良いって事でしょ。占い、おまじない、魔術…何でも駆使してね。それが“魔法研”のアピールにもなるわ」
 流石、生徒会副会長と言うべきか、めいの言葉に、なつみとそら、そしてどれみまでも納得してしまう。りずみも、こう言われては反論のしようが無いという感じに黙り込んでしまう。
“トントン”
 そこに、部室の扉をノックする音が響いてきた。どれみが「どうぞ」と言うと、扉が開いて、男子生徒が一人、顔をつっこんで来た。
「宮本君っ」
 どれみはその顔を見て言う。それはどれみ達のクラスの委員長をしている、同じ美空小出身の男子、宮本まさはるだった。
「秋月副生徒会長、委員会が始まりますので、会議室までお願いします」
 宮本に言われ、めいは思い出したように立ち上がる。
「今日は、委員長会議だったっけ…ごめんごめん」
 そう言って、宮本とどれみ達に謝って、部室から出て行く。突然、めいが出て行った後の部室はシーンとしてしまう。
「何だか、それっぽい重要なアドバイスをして、肝心な時には居なくなるって感じねぇ」
 なつみが苦笑いしながら呟く。他の3人もほぼ同意見の様に頷いた。

 めいの後に付きながら、会議室に向かう宮本は、さっき魔法研の部室に入る前、偶然聞いてしまった部室内での会話が何度も頭の中をリピートしているのだった。
“伊集院さちこちゃんが最近、ストーカー被害に遭っているかもしれない”
 宮本が強張った顔をしているを見て、めいは心配そうに尋ねる。
「どうしたの?…お腹でも痛い?」
 しかし宮本の返事は返って来なかった。

「でも、これって一見ストーカー事件に思えて、実は悪霊等の仕業かも…」
 なつみが怪しい笑みを浮かべながら言う。そらとりずみはそういうのが苦手で、引いて怯えてしまう。
「なつみ先輩…冗談は止めてくださいよぉ」
 そらは泣きそうな声で言う。しかしなつみはキラリと目を光らせて嬉しそうに言う。
「冗談じゃないわよ。こんな時の為に通販で買った…この“ゴースト眼鏡”が役に立つわ。これをかけると普通は見えない霊的な物が見えるのよ」
 なつみは今かけている矯正用の眼鏡の上に、その怪しげな眼鏡をかけて言う。どれみはなつみの顔を苦笑いしながら見つめて、思いついたように尋ねる。
「なつみちゃん、そこのロッカーの前、何か見える?」
「えっ…ロッカー?古いロッカーよね。汚れとか染みが顔の様に見えなくも無いけど、これは霊的な物じゃ無いわ。ただの汚れね」
 なつみはゴースト眼鏡をかけたままロッカーをマジマジと眺めて言う。
「そ、そーなの…」
 どれみは苦笑いして答える。その隣で、りずみはロッカーを見つめたまま怯えた瞳で固まっている。りずみとどれみにはロッカーの前に白い女性が浮いているのが見えるのだ。こう言うのが苦手なりずみはそれに気が付いた瞬間に思考がストップしたようだ。ロッカーの前の白い女性がすぅ〜っとどれみの方へ近づいてきて、どれみにしか聞こえない声で話しかけてくる。
『ちょっとぉ〜私で遊ばないでくれるっ』
「いや、ちょーど良かったからさ」
 どれみは小声で答える。相手は部室のすぐ外の裏庭にある古井戸に住み着いている井戸ユウレイというオバケだった。元魔女見習いのどれみと現役魔女見習いのりずみにはその姿がはっきりと見えるのだった。
「何で、部室をうろうろしてるのよっ」
『暇だからね〜良いじゃ無いのよ』
 井戸ユウレイは楽しそう言う。
「伊集院さんの件、幽霊とかオバケの仕業かな?」
 どれみは井戸ユウレイに尋ねてみる。
『私の知る限りはこの街に私以外にオバケは居ないと思うけど…結構、縄張りとか厳しいのよオバケの世界も』
「へぇ…」
 どれみは、そんな事はあまり知りたくないという感じに力無く感心する。
「どれみ先輩…誰と話しているの?」
 そらは小声で話しているどれみに不思議そうに尋ねる。
「悪霊とか言う類いの仕業って可能性は無いっぽいなぁ。やっぱり普通の事件なのかぁ…」
 どれみ少し残念そうに言う。どれみ自身も少しは不思議な事が絡んでいる方が良かったみたいだった。