おジャ魔女わかば
第31話「あぁ!おジャ魔女戦隊」
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「プリティ・ウィッチー・わかばっち!」
「プリティ・ウィッチー・さくらっち!」
「プリティ・ウィッチー・蘇雲っち!」
 三人が思い思いのポーズと決め台詞を言う。続くつくしは少し照れながら…。
「プリティ・ウィッチー・つくしっちぃ…ちょっと恥いわぁ」
「そぉ〜かなぁ…なんか、魔女だって感じがするよ」
 わかばはご機嫌だった。さくらがあずさに尋ねる。
「あずささんはお着替えいたしませんの?」
「私は…染まる気ないから」
 あずさは冷たく言う。それが彼女の決め台詞みたいだとわかば達は苦笑い。こうして魔女見習い服に着替えた5人はマジカルステージで何をするかで、また雑談を始める。そこに…。
“ボンッ”
 突然、大きな煙が上がり、スラリと背の高いシルエットが煙の中に出現する。それは魔女王宮の侍従長マジョリンだった。
「すみません、この街で巨大な空を飛ぶ生物を目撃したと言う情報は無いですか?」
 マジョリンは急いでる様子で早口で質問してきた。
「…いえ、何も」
 少し考えてから、わかばが答えた。みるとは不思議そうに尋ねる。
「何か、あったんですか?マジョリンさん」
 マジョリンは事務的に淡々と語りだした。
「魔女界のマッドサイエンティスト、マジョフロンの研究所から、違法で作られた生物が逃げ出しました。そしてその生物はこの街に潜伏している可能性が大きいのです。私はその生物を捕獲、又は処分する為にこの街へ来ました。何か情報があったら、連絡をください。では」
 と言って、マジョリンは姿を消してしまう。

 突然の事で唖然としている一同。そんな中、さくらが呟く。
「マジカルステージの願い事、思いついたんですけど、いいかしら」
「たぶん、みんな同じよ」
 みるとがウインクする。5人は円を描いて配置に付いた。そして順番にポロンを回し呪文を詠唱する。
「ポリーナポロン あざやかに」
「セパータサリス かろやかに」
「キキリアトゥーラ まろやかに」
「パノータピリア おだやかに」
「ポチットナーポ なめらかに」
 5つの輝きが一つになり、上昇する。わかば達は声を揃えて唱える。
「マジカルステージ! 謎の飛行生物を見つけて!」
 部屋を強烈な光が包む。目を開けていられないほど眩しい光もおさまり、ゆっくりと目を開くと、わかば達は変化した部屋を見る。リビングはモニターと機械がたくさん並んだ部屋に変わり、魔女見習い達は私服に戻っていた。しかし、腕にタップと同じデザインのブレスレットをしていた。何故かさくらだけ派手は軍服の様な格好をしていた。
「何、コレ」
 蘇雲は周りを見渡して言った。
「さくら、その格好はなんなの?」
 みるとの問に、さくらは静かの答える。
「さっきのマジカルステージで、誰かバトルレンジャーの事を考えていた人がいるのではないかと…」
 申し訳無さそうにわかばが手を挙げる。それにさくらはニコッと笑みを浮かべ…。
「了解しましたわ。今から私は名古屋長官!君達おジャ魔女戦隊の長官である!」
 ビシっと背筋を伸ばしたさくらが宣言する。すっかりなりきっているみたいだ。
「さぁ、ブレスのボタンを押して、マジカルチェィンジと叫びなさい」
 わかば達はさくらに言われるままにブレスのボタンを押して叫んだ。
「マジカルチェィンジ!!」
 各々の声を認識したブレスから激しい光が流出し、体を包み込んでいく。そして、さくらの目の前に4人のヒーロー…いやヒロインが出現した。
「マジョネイビーつくし」
「マジョグリーンわかば」
「マジョホワイトみると」
「マジョチェリーピンク蘇雲」
 わかばは変身した自分の姿に感動していた。つくし、みると、蘇雲も楽しそうだった。四人の姿は各色を象徴したマント付きスーツにゴーグル付きヘルメットを装着した、まさに戦隊ヒーローのそれになっていた。
「でも戦隊って5人じゃ…」
 と言ってわかばは部屋の隅で本を読んでいたあずさを見つめる。
「私は染まらないと言っている」
 あずさはそう小さく呟いて、わかばと目を合わせようとはしなかった。しかし彼女の腕にもブレスが光っていた。
「とりあえず4人で行ってください。まずは手分けして街中をパトロールし、何かあったら、このブレスで通信すること。では解散ですわ」
 さくらが長官らしく命令を出した。おジャ魔女戦隊の4人は私服に戻り、魔法堂に出来た司令室を飛び出して街へと向う。

***

 つくしは近くの公園に来ていた。
「なんて事やねん…」
 そこでつくしが見たものは石化されたマジョリンだった。つくしは指令室に連絡し、敵に石化能力がある事を全員に告げるように言った。公園の周辺には他にも石化された人々がオブジェの様に並んでいた。

 わかばは海のほうへ来ていた。
「だ〜れだっ!」
 突然、背後から目隠しを喰らった。
「ゆ…ゆうまさん、ふざけないで下さい」
 犯人は龍見ゆうまだった。わかばは少し怒って振り向いた。
「怒らない、怒らない、探してるんだろ、トンボ」
「トンボ?」
 ゆうまの見透かしたような態度に、わかばは驚きつつ聞き返した。
「今朝ね、ゆうきが使ってる“どこでも魔女界の扉”から巨大なトンボが飛び出したんだ。で、部屋滅茶苦茶にされてさ、ゆうき、仕返しするって、探してるんだけどさ、わかばっちもそうじゃないの?」
 どうやら謎の生物はゆうまの妹で魔女見習いのゆうきが使っている扉から虹宮に移動してきたみたいだった。
「あの、うちの魔法堂二階に対策本部があります。そこに行けば最新情報が貰えると思うから…」
「わかった、ゆうきを見たら伝えておくよ」
 その時、突風が吹きぬけて行く。わかばは必死にスカートを押さえる。ゆうまはわかばのスカートを気にしつつ、空を見上げると、そこに物凄い勢いで飛び去る大きな物体が居た。
「あれかっ」
「ほんとにトンボだ…追いかけますっ」
 わかばはそう言って、素早く魔女見習い服に着替えて箒に飛び乗って上昇して行く。

『グリーンの情報だと、ターゲットは巨大なトンボ型生物みたいですわ』
 司令室からのさくらの声を聞きながら、みるとは呟いた。
「これ、トンボには見えないけどなぁ…」
「アゴが凄いネ。それにたくさんいるヨ」
 蘇雲も首を傾げる。子供たちの悲鳴を聞いて、二人は川原に来ていた。川から伸縮性のアゴを出したり引っ込めたりしながら謎の1m位の生物がたくさん上がって来ていた。その数約30匹。それらは一斉に二人に襲い掛かってきた。