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「ピロリンコールは魔女界とその周辺の主な世界では通話可能のはずだ。従って、電波の届かない場所は無いはず」
ゆうまが説明する。わかばはそれでも反応の無い携帯を示して首を横に振った。
「でも、今日、魔女界が新しい世界とつながったんだ。その世界にはまだ中継基地が無いから…多分、つくしちゃん達は大魔法使い界にいるんだと思うよ、そしてマジョシルフも」
ゆうまは付け足した。
「アニニーテさん達の故郷…」
「ありがとうお兄ちゃん。じゃ、急ごう!」
ゆうきは物思いにふけるわかばを引っ張って箒に乗って飛びたった。それをゆうまが追おうするが、半泣きのみるとがゆうまの服を引っ張っている。
「そぉ、起きないんですけどぉ〜」
「えっと……その」
ゆうまは何て言って良いのか、困ってしまう。
***
「つくし、あと何分?」
「あと15分や!」
あずさはつくしに尋ねた。ロイヤルパトレーヌ使用の為のチャージ時間の残りだった。
「それまで、手は出せない、いや、ロイパでも今のマジョシルフに勝てるかどうか」
あずさは不安を見せる。それでも2人は箒でマジョシルフを追跡していた。
「あずさはん、ウチに策がある」
つくしはあずさに提案した。
「そろそろ終りにさせてもらう」
マジョシルフを追い詰めたあずさが光に包まれ、ロイヤルパトレーヌのドレスをまといリースポロンを構えた。
「あなた1人で、どうするというの」
マジョシルフは自信げに叫んだ。あずさの側につくしの姿は無かった。あずさは構わずリースポロンを回した。マジョシルフも即座に衝撃波を放って魔法を妨害しようとするが…。
「パルーナパトレーヌ!!」
あずさの直前で衝撃波が跳ね返って飛び散る。あずさの目の前に二メートル四方の光の壁が出現していた。
「ロイパの悪しき魔法を跳ね返すという特性を持った壁よ」
「守りを固めて私に勝てるとでも」
マジョシルフは攻撃の手を休めない。
「守る気は無いわ!」
そう叫んで、あずさは壁を押してマジョシルフに突っ込んで来た。
「最強の盾で攻撃するか。悪くない。しかし、そんな大きな板切れが当るものかっ」
直線的な動きしか出来ないあずさと壁にマジョシルフは距離をとり軽々とかわそうとするが……。
“ガンッ”
マジョシルフの背中に何かがぶつかる。それはつくしが支える同じ壁だった。
「何っ」
「最強のサンドイッチの完成やっ」
つくしが言うと、マジョシルフの正面からあずさの板が完全にマジョシフルを押さえ込んだ。二枚のロイパ板に挟まれ、つくしとあずさに目一杯の力で押さえつけられ、マジョシルフの動きは完全に止まる。
「私達の水晶玉、返してもらうわよ!」
あずさは叫んで“はっ”とした。2人はマジョシルフを押さえるので手一杯だった。少しでも手を緩めるとマジョシルフを逃がしてしまう。
「どうやって、水晶玉を奪い返すの?」
「そこまで考えてへんかったわ〜」
つくしが苦笑いを浮かべて言う。
「フッ」
マジョシルフが笑った。
「あなた達に悪いけど、私は、もう後戻りはできないのよ!」
そう言うと、マジョシルフの腕のブレスレットが輝きだした。魔力増幅器がフルパワーで作動する。周囲が光で包まれる。その光は大魔法使い界を揺るがすほどの力を秘めた光だった。
***
大魔法使い界への扉があるというマジョドンの屋敷を目指すわかばとゆうき。でも二人の間に会話は無かった。
“ゆうきちゃん、やっぱり私のこと”
わかばは気まずさを感じながら箒で飛んでいた。
“いまさら、わかばとどうやって付き合えばいいのよ”
ゆうきも同様に気まずさを感じていた。そんなゆうきの心で声がした。
『本当は友達になりたいくせに、素直になるネ』
「誰!」
ゆうきは思わず声を出してしまう。
「ど、どうしたの?」
わかばはびっくりして尋ねるが、ゆうきは何でもないと首を振った。
“あなた何よ”
ゆうきは心の中で呟いた。
『私の名は李蘇雲、知ってるよネ』
“いや、何で私の心の中にいるのかと聞いているのよ”
『さっき、夢から出るのに失敗したネ、そしたらここに居たみたいな……どーするネ』
ゆうきの疑問に蘇雲はあっけらかんと答えた。
『あんた、わかば達と友達になりたいネ、ここに居るとわかるネ』
“人の心、勝手に見ないでよ!……それに今更、友達になんて”
ゆうきは淋しそうに呟いた。
『そんな事は無いヨ、私の言うとおりにするネ、良いか!こう質問して、わかばが好きと言った物を自分も好きだというね。そーすれば友達ヨ』
ゆうきは訳がわからないまま、蘇雲の言うままにわかばに質問した。
「ねぇ、いきなりだけど、龍とコウモリ、どっちが好きかなって」
突然の突拍子の無い質問にわかばは驚きを隠せないが、すぐに理解して答えた。
「そうだなぁ〜、やっぱりコウモリかな……でもね本命は、もうすぐ登場するカニなんだな」
「そ、そうよね、カニ最高よね」
ゆうきは言われたとおり話を合わせてみた。
「えっ、ゆうきちゃんもそうなのぉ〜つくしちゃんはアレは弱そうだからダメだって言うんだよ。良かったぁ〜わかば1人じゃないんだね」
「ええっ…(一体、何の話なの?)」
わかばはゆうきの手を取ってはしゃぐ。
「私達、友達だよ、二人で“カニさん応援団”を作ろうね」
「そ、そうね」
ゆうきは苦笑いしながら頷いた。二人が友情に結ばれるのを見届けて、蘇雲はゆうきの心から消えた。
***
マジョヒールの診療所でみるとは心配そうに蘇雲を見つめていた。
「ミイラ取りがミイラぞい」
「私はミイラじゃないネ」
蘇雲は突然飛び起きて、マジョヒールの言葉を否定した。
「よし、それじゃ、わかばっちを追いかけよう」
ゆうまは焦りながらそう言い、みるとと蘇雲とゆうまはマジョドンの屋敷を目指し飛び出した。
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