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わかば達は商店街を抜けた公園の前で、田村瑞希と潤藤要に出会った。
「あら、龍見さん。最近は頭で鳥を飼うのが流行なのかしら〜」
「ちょっとまぬけぇ〜」
二人はいきなり、ゆうきに絡んできた。ゆうきもちょっと気にしていたので、言われてムッとする。
「なっ!」
「ゆうきはん、ほっときぃ」
言い返そうとするゆうきをつくし素早く止めた。
「龍見さん、いつの間に桂木さんと友人になりましたの? 別に良いですけど、1つだけ忠告しますわ。桂木さんと付き合うのはお止めになった方がよろしいわ…れいな様を敵にまわす事になりますわよ」
要はわかばを見据えつつ、ゆうきに言う。
「あんたら…私を本気で怒らせたいのか」
ゆうきの怒りはピークに達している。しかし、それもかぐらの言葉でクールダウンを余儀なくされた。
「たいへん、ミルちゃんが居ない!」
かぐらはわかばの胸を見て言う。そこに抱いていた筈のミルが居ないのだ。
「なんだって、でも、いつの間に、どうやって?」
「とにかく探すんや!」
ゆうきとつくしはそう言って辺りを探し出した。黙って立ち尽くすわかばをつれてかぐらもミルを探しに行った。
捜索の結果、ミルは商店街の真ん中辺りのペットショップ店頭で子犬とじゃれている所を発見された。
「いくらわかばでも、抱いてた赤ちゃんが居なくなったら気付くで」
つくしが不思議そうに言う。
「今はそんな事はどうでもいいわ。それより、短時間でどうやってここまで…」
ゆうきがわざと話題を変えるように言う。
「…それも謎や」
つくしはこう答えるしかなかった。子犬とバイバイさせて、かぐらがミルを抱き上げる。
「小鳥に反応は無いし……っていないしっ」
ゆうきが言いながら、頭を手で確認すると、今度は小鳥が消えていた。
「もう、いったいどうなってんねんっ」
「みんな、ごめんなさい。鳥さん、探さないと」
復活したわかばが言う。今度は消えた小鳥を探すことに。
捜索の結果、小鳥は商店街端の青果店でキウイフルーツをかじっていた。
「ごごご、ごめんなさいっ。お金払いますから」
わかばは慌てて、小銭入れを取り出して謝った。
「この鳥、わかばちゃんの鳥かい?」
青果店のおじちゃんがわかばに言う。買い物でよく商店街は利用するので、わかばとは顔見知りなのだ。だからお金は要らないって言うおじちゃんに「ありがとう」って何度も頭を下げてわかばは小鳥を抱えてかぐら達の所へ戻っていく。わかばの腕から抜けだした小鳥は今度はつくしの頭上でくつろぎ始めるのだった。
「今度はウチか……」
つくしは頭上の小鳥の感触を確かめながら考え込む。
一行は再び歩き出し、商店街を抜け、再び公園の前の道に差し掛かった辺りで、ころころと足元にサッカーボールが転がってきた。
「すいませーん」
小学校低学年の男の子が数人、公園の中で手を振っている。
「…仕方ないなぁ」
ゆうきは軽く助走をつけて、ボールを蹴り上げた。ボールは綺麗な放物線を描いて、男の子のすぐ側でバウンドし、男の子の足元に収まった。
「さぁ、行こう」
ゆうきはわかば達の方へ振り返った。
「あんた、サッカーできんの?」
つくしはゆうきの動きを見て尋ねる。
「サッカーは探偵に必要な体力作りの為に少しね」
ゆうきは答える。何処かの漫画に書いてあったセリフから始めた事なのだが、それは伏せていた。しばらくして、わかば達は歩き出し、公園を後にした。
この一部始終を道の向こうで見ていた少女がいた。
「…なんて美しいフォーム、そして正確なパス。あの子…確か二組の龍見ゆうきさん、ただものじゃないわ」
少女はずっとゆうきの後姿を見つめていた。
***
「一体、何処へ行けば良いのかな〜」
「マジカルステージだからねぇ」
歩きながら、ゆうきの疑問にわかばは答える。
「でも、当が無いんじゃ、魔法使わなくても同じだよ」
かぐらも魔法の効果が見えないのでションボリする。
「キウイ……いや、キウイフルーツか。ウチ等は一級合格してても、まだまだ未熟って事か。魔法で即、願いが叶う訳やなく、魔法の意味を考えなあかんからなぁ」
そう言いながら、つくしは明らかに何かを探すようにキョロキョロしながら歩いていた。
「あかん、チマチマ、埒あかんわ」
そう言うと、つくしは徐に魔女見習い服にお着替えして、箒で大空に飛び上がった。
「何、いったい、どうしたの、つくしっ」
慌ててゆうきが尋ねるが、すでにつくしは空高く上がっていた。わかば達もお着替えして箒に跨り、つくしを追いかけた。
わかば達がつくしに追いついてきた頃、小鳥がつくしの頭から飛び立った。
「よっしゃ、来たっ」
ガッツポーズのつくし。ゆうきはイラついていた。
「このマジステに意味なんて無いんじゃ」
「いや、そーとも言えへんで…」
つくしは何かに気づいているみたいだ。
「ほら見てみ、小鳥は動物園の方へ飛んで行きよる」
飛び去っていく小鳥を指差しながらつくしは言う。わかばはパッと笑顔を見せて言う。
「つくしちゃん、何か気付いたの」
「ほら、追わな!」
つくしに言われて、わかば達は箒を操った。
小鳥はつくしの言った通りに動物園に舞い降りて行った。
「あんなごちゃごちゃしたとこに降りられたら、見失うよ」
ゆうきはそう言って加速しようとしたが、つくしに止められた。
「ちょい待ちぃ、“し”の付く動物は?」
「はぁ?何なの、いきなり…」
ゆうきは呆れてつくしを見返す。
「し…しまうま」
「し…しか…」
かぐらとわかばが考えている。わかば達は動物園の側に降りて魔女見習い服を解除し、普段着に戻った。
「二手に分かれよう、わかばとゆうきはんは鹿、かぐらとウチはしまうまや!」
わかば達はつくしの言うとおりに二手に分かれ、小鳥を探しに行った。
「つくしちゃん…良くわからないんだけど…」
かぐらはつくしに尋ねた。
「最初にあの小鳥が何処にとまったか憶えてる?」
しまうまのいる場所目指して走りながら、つくしはかぐらに聞いた。
「ミルちゃん」
「ミルちゃんの何処や!」
つくしはさらに聞く。
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