や〜っと!おジャ魔女わかば
第4話「ロイガをめざして」
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「それじゃ、私はそろそろ…あっ、そうそう、今日ってロイガの入隊試験よね…って、それを受けるっていう魔女見習いは、ここには居なかったみたいね」
 デラは周りを見渡して言う。
「ロイガって、王宮騎士団ロイヤルガードだよね」
 かぐらは前に見た大きな鯨型の戦艦を思い出していた。
「龍見さん、この試験に向けて猛勉強してるって言っていたような…。試験、今日なのね」
 と言うひなたにかぐらは問う。
「何で、ロイガなの。ロイガって軍隊なんでしょ、なんでゆうきちゃんが魔女界の軍隊に…」
「さぁ…詳しくは知らないけど、何か思う所があったんじゃないかなぁ…」
 かぐらは納得できないような表情を見せている。そして魔法堂を飛び出してゆうきの家に向おうとする。そんなかぐらをひなたが呼び止める。
「龍見さんは、たぶん、自宅から簡易魔女界の扉で魔女界に行っている筈よ。だから、今はもう魔女界にいると思うわ」
「あっ、そーかっ。ありがとう!ひなた先生」
 かぐらは向きを変え、魔法堂の2階に上がり、そこにある魔女界の扉から魔女界へ向った。
「ここが真ん中のラインじゃ」
 モノサシを持ったマジョミカが言う。それにつくしが反論する。
「あかん、2次元ちゃうねん、これは3次元や、体積を測って同じにせな、半分とは言われへん」
「2人とも、いい加減にしなさいよ」
 いつまでも口論を続けていた2人はキキの怒鳴り声で大人しくなる。そこから何やらキキの説教が始まりそうな雰囲気だ。
「さてと、私もそろそろ行こうかな♪」
「私も、次の魔法堂に御用聞きに行かなくっちゃ♪」
 ひなたとデラはそそくさと逃げるようにそれぞれ目的の場所に向った。

「王宮騎士団って言うからには、王宮だよね…とりあえず行ってみよう」
 かぐらはデッキブラシに跨り、魔女界の空を飛行していた。かぐらは普通の箒には上手く乗れず、デッキブラシにしか乗れない珍しい魔女見習いだった。最近、少しその事を気にしていた。
「やっぱ、デッキブラシは恥ずかしいかなぁ〜。ゆうきちゃん、箒の扱いが上手かったよね〜、今度、教えてもらおうかな、箒の乗り方」
 などと考えていると、かぐらは前方に青緑の見習服を見つけた。
「ゆうきちゃん、はっけーんっ!」
 かぐらはデッキブラシの速度を上げた。しばらくしてかぐらはゆうきに並んだ。
「かぐら、どうしたの?」
 ゆうきは自分を追いかけてきた感じのかぐらに対し不思議そうに尋ねる。
「ゆうきちゃん、どうしてロイガなのっ。なんでロイガに入らないといけないの」
「いろいろとね、考えた結果なのよ」
 そう言うと、ゆうきは逃げるように速度を上げる。それはかぐらに上手く説明できる自信がなかったからかもしれない。かぐらは必死にゆうきについて行く。

 ゆうきは王宮近くにある、色鮮やかな王宮とは反対に灰色の無機質な建物に入って行く。
「ゆうきちゃんっ」
 かぐらもそれについて行く。ゆうきは早足で歩き、かぐらを引き離そうとする。そして通路の奥の大部屋に入る。そこはロイガ入隊試験の筆記試験の会場だった。入隊を希望する魔女達があつまって、試験前の緊迫した空気が流れていた。席は基本的に自由になっていて、ゆうきは一番後ろの席に座る。その隣にかぐらが座り込んでくる。
「ゆうきちゃん」
「もう…かぐらったら…」
 ゆうきは仕方ないなぁ…と言う感じに話し始めた。
「虹宮に悪夢が現れて、知らない所で、あずさやわかばが戦っていて、お兄ちゃんも知らない内に戦っていた。私は何かあるって感づいておきながら、3人の所まで行けなかった。どこか自分の中で甘さや甘えがあったと思う。その代償がお兄ちゃんを失った事。そして、わかばも…。もう、自分の甘さで嫌な想いをしたくないの…だから、今はロイガで自分を鍛えて、本当に自分に何が出来るかって事を知りたいんだ。そして本当に大事な人達を護れる力を手に入れたい」
 ゆうきは思う事を全てぶつけた。自分でも上手く伝わるかは不安だったが、今のゆうきにはこれで精一杯だった。
「そうだったんだ。あれから、ゆうきちゃんが出した答えがこれだったんだね……なら、私、応援するよ。そうだよ、今はとにかく頑張らないとね。お互いにっ!」
「ありがとう。かぐら」
 ゆうきはそう言って微笑む。かぐらはずっとゆうきを見つめている。
「えっ…何、かぐら」
「何でも言って、協力するから」
 かぐらはゆうきを手伝いたくて、ゆうきの言葉を待っているようだ。
「……今は…邪魔ね」
 ゆうきは言い難そうに告げる。試験目前なわけだから仕方ない。かぐらはガクッと落ち込んでいた。そんなゆうきとかぐらに試験官の魔女が試験用紙を配っていく。
「えっ…私も?」
 かぐらは試験用紙を前に首を傾げる。
「あのっ、すいません、この子は…」
 ゆうきは手を上げて試験官を呼び止める。
「ゆうきちゃん、良いよ、受けるだけ受けてみる…勉強してないから絶対落ちるけどね」
 かぐらはゆうきに言う。ゆうきは試験官に何でも無いと頭を下げた。
「ありがと。本当は側に居てくれるだけで緊張がほぐれて、助かるんだ」
 ゆうきは照れながら小さく呟いた。

 筆記試験は60分。試験を終えたかぐらはぐったりしていた。
「全然わかんなかった…書く所多すぎ…マークシートにしてよ〜」
「確かに言えてる」
 ゆうきは苦笑いで答える。
「ゆうきちゃんはどうだった」
「うん、一応、受験勉強してたから、それなりに手応えあったわ。結果は一時間後に発表されて、その後、合格者に面接と実技試験が行なわれるんだ」
 ゆうきはかぐらに説明した。
「大丈夫、ゆうきちゃん、絶対に合格するよ」
 かぐらはガッツポーズを見せる。