や〜っと!おジャ魔女わかば
第12話「破壊神覚醒!」
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 その昔、星の海で暴れまわっていた最強の海賊団があった。その名をマジョスカール海賊団。主に星の海に眠る財宝を集めて、その入手の為のスリルと奪い合いを楽しんでいた。しかし、その繁栄は長くは続かなかった。突然の解散。そのキッカケは…。当時アクアロイガの部隊がマジョスカールのエイ型の宇宙戦艦エビルスティンガーと遭遇し戦闘になっていた。ちょうど、船員の大半が出払っていたマジョスカール側は苦戦し、船内に敵の侵入を許してしまい、白兵戦へともつれ込んでいた。
「マジョスカール。お前にはデリート許可が下りている。覚悟!」
 それはまだ若いロイガの新米騎士だった。緑色のロングヘアにまだ幼さの残る顔。そして頑なに正義を唱える心。若さゆえ、恐れを知らないのか、追い詰めたマジョスカールに一人斬りかかって行った。
「お前に、私を斬る事は不可能だ。私の前から消えろっ!」
 マジョスカールは高圧的に叫ぶ。普通の兵なら、これにすくんで、攻撃を躊躇してしまうのだが、この新米騎士は違った。
「私に正義はある。正義は決して悪には屈しはしない!」
 力の差は歴然としているのに、正義を信じ、突っ込んできた。マジョスカールはやれやれと、手刀で彼女の剣を叩き折った。本当はマジョスカールは相手を傷つけたくないのだった。だから、あいてが戦意を失うように動いていた。しかし、彼女は尚も使命感に燃えて挑んでくる。マジョスカールは思った。
“一途なまでに真っ直ぐだ。上手に導いてやれば、良い魔女になるだろうに………んっ!”
 マジョスカールの思考が突然途切れる。頭の中が真っ白になる。

 マジョスカールの意識が正常に戻った頃、他の騎士達がマジョスカールを取り囲んでいたが、皆、戦意を失って、逃げ腰になっている。マジョスカールは手を伸ばして何かを掴んでいた自分の格好に気が付く。そして指の間から光の粒子が舞い上がっている。
「……いったい何が」
 状況が把握できないマジョスカールは自分を取り囲む一人の騎士を見つめると、その騎士は、恐れをなして逃げ出していく。その恐怖が広がって、周りにいた騎士魔女全員が逃げ出していく。マジョスカールは足元に緑色の長い髪の毛が散乱しているのを見て、悟った、自分では制御できないドス黒い物が心の中で動き出している事を…。マジョスカールが海賊団の解散を決意したのは、その直後だった。

「この石になっているのが…破壊神なの?…普通の美しい魔女にしか見えない。こんな窮屈な姿じゃかわいそう…」
 かぐらは彫刻の様なマジョスカールの顔を見つめて悲しそうに呟く。
「悲しむ事は無い…あと少し、破壊のエナジーを与えれば破壊神、我が主、マスターブレイカーは目覚める」
 ケイとしか思えない仮面の男が告げる。ここはかぐら達が乗るツインメダルシャーク号を襲ってきた謎のエイ型の戦艦エビルスティンガーのブリッジだった。
「じゃ…その為にあの飛行船を襲い、私達の船にも攻撃をしかけてきたと言うの?」
 あずさが怒りを抑えながら問い詰める。ケイは悪びれた様子も無く頷く。そして、冷たく告げる。
「せっかくの客人だったが、お喋りは終わりだ。君達の船に我が主復活の糧となってもらう。ホコ・ブレイカー、行けっ」
 エビルスティンガーの広い背中が開いて、レーザーレンズが姿を見せ、輝きだす。ホコ・ブレイカーはエビルスティンガーの攻撃制御AIだった。レンズから発振したレーザーはヘアピンを描いて、エビルスティンガーの腹に貼り付いているかぐら達の船、ツインメダルシャーク1号機に向ってくる。
「つくしっ、逃げてっ」
 あずさは聞こえないのをわかっていながら叫ぶ。その直後、激震が船を襲う。ケイが叫ぶ。
「タテ・ブレイカー!何事だっ」
 防御制御AIタテ・ブレイカーからの返事は無かった。代りに冷たい合成音の様な声が響いた。
「タテ・ブレイカーのセットアップがまだ終了していません」
「ブレイン・ブレイカーか。現状はっ」
 ブレイン・ブレイカーはこの船の頭脳AIで、ブレインはメインモニターに現状を映し出す。
「ソーシャーク、マジョローズさん?」
 モニターにはエビルスティンガーに鋸ザメ型戦艦のソーシャークの鋸状の角が突き刺さった状態が映し出されていた。そのお陰で、ツインメダルシャークはレーザー攻撃の直撃を免れたのだった。
「かぐらっ、そこに居るのか!すぐに離脱してソーシャークに来いっ!」
 通信回線を通じてマジョローズの声がエビルスティンガーのブリッジに響いた。
「かぐら、早くっ」
 あずさはかぐらの手を引いて、ブリッジを後にした。
「忙しない客人だ。主が目覚めるまで待てば良いものを…」
 二人の後姿を見つめながらケイは不敵に笑った。

「どないなってんねん!」
 つくしの叫びに、ツインメダルシャークの操縦室に戻ってきたあずさが告げる。
「すぐに離脱して、ソーシャークに格納してもらって、この船の装甲じゃ、あのレーザー攻撃に耐えられない」
 つくしは瞬時に判断して、あずさの言うとおりに船を動かした。容赦無く襲い来るレーザー攻撃を掻い潜り、エビルスティンガーに突き刺さるソーシャークの腹部の格納庫に飛び込んだ。
「奴はまだ、目覚めていない。このまま押し切るか!」
 ソーシャークのブリッジの海賊魔女マジョローズは目前に迫っている緑の惑星を見つめて呟いた。そこにつくし達が駆け込んでくる。
「マジョミルが出ていて居ないんだ。すまんが手伝ってくれ」
 マジョローズに言われ、つくし達3人は、それぞれブリッジで持ち場についた。前に一度、この船の乗組員をしていたので、戸惑う事は無かった。
「エビルスティンガーをあの星に沈めるぞっ!」
 マジョローズは叫んだ。