ダブルウィッチ☆プリキュア
第2話「閃光の雷キュアライトニング轟く!」
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 最後にあずさの長い黒髪のストレートロングが艶やかに黒光りを放つようになりクルリとポニーテールを作る。続いてポーズをとりながら名乗りを上げる。
「大地を貫く閃光の雷!キュアライトニング!!」
 キュアライトニングとなったあずさ。名乗りと共に小さなスパークが体を包む。
『闇から世界を守る。伝説の光の使者プリキュア。君の使命はユメコワーセを倒し、ナイトメアシードを回収する事。そしてもう一人のプリキュアを探し出すこと』
 電話の声は告げる。
「ライトニングスパーク!」
 キュアライトニングは右手を上げる。そこから発生した放電がユメコワーセと呼ばれる怪獣を包み込み、電撃を与え麻痺させることで動きを封じた。その状態でキュアライトニングは腰の専用キャリーケースに収まっている携帯電話に話しかける。
「もう一人、いるっていうの?」
『ああ、風の戦士がな』
 それを聞いたキュアライトニングの表情が硬くなる。


 こうして、あずさの、キュアライトニングの戦いが始まったのだ。一週間前の出来事を思い出していたあずさは床に転がっている携帯電話を踏みつけて言う。
「どうして、わかばを巻き込んだのっ」
『彼女はキュアウイングの……選ばれた風の戦士…って、あずさ、君はまさか』
 あずさの怒り、そしてわかばへの拘りにストロは何かを感じた。
「そうよ。最初に風の戦士を探せと言われた時から、そうじゃないかって思っていた。あの日、最初に変身した日、家に帰ると母から突然、虹宮へ引っ越すと告げられ確信したわ」
 あずさは淡々と言う。ストロは問いかける。
『なら、何故、言わなかった。言っていればすぐにでも力を与えて。私も命を削る事も無かったし。ユメコワーセももっと楽に倒せていた筈だ』
 この言葉にカッとなったあずさは再び、携帯を蹴り上げる。
『ちょっ、一体なんなんだっ』
「わかばは優しい子なの。戦いとは無関係に生きていて欲しいのよ。無理に戦わせたら、わかばの心は壊れてしまうから。それがわかるから、私は……」
 握りしめた拳が震えていた。もう、怒りとも悲しみともわからなかった。
「……あずさちゃん」
 背後から控えめな声がした。振り返ると、そこにわかばの姿があった。思わず、涙を隠すようにあずさはわかばをキツく睨みつけてしまう。わかばはビビって言い訳を始める。
「お、お父さんの研究所に行って、あずさちゃんのお母さんからここの住所を聞いたんだよ。で、来てみた。確認したいことがあったから。インターフォン何度鳴らしても出てくれないし、鍵が開いていたんで……悪いと思ったけどかってに……」
「帰って。確認したいことはもう出来たでしょ」
 あずさは背中を見せて、それだけ言う。
「あずさちゃんは私の事をすごく大事に思ってくれていた。私だってあずさちゃんの想いと同じくらいにあずさちゃんが大事なんだから。だから、だから、これからは二人で…」
 わかばは涙ながらに訴えるが、途中で言葉を遮るようにあずさが言葉を挟む。
「さっき倒したユメコワーセと戦っていて気付いた事があるの。アレはわかばと同じ髪型の子を襲おうとしていた」
 あずさの話にわかばとストロは何も言えない。あずさは続ける。
「わかばを巻き込まないようにと距離を置いたわ。結果、反動で私のわかばを求める気持ちがあの悪夢を生み出したのよ。それでわかばを傷つけ、戦いにも巻き込んでしまった」
 あずさは自責の念で押しつぶされそうだった。
「こんな私が…わかばと二人でなんて言えない。帰って……お願いだから」
 最後は涙声だった。わかばは何も言えず、帰るしか無かった。

***

「あんなあずさちゃん、はじめてかも」
 自宅に戻って来たわかばが自分のベットに腰掛けながら呟く。
『優しさが裏目に出てしまったというところか』
 携帯電話の中のストロが言う。ストロはわかばとあずさの携帯電話間を行き来できるみたいである。しかし、しばらくあずさの方には行きたくないみたいだ。扱いが悪いので。
『でもな。優しさがプリキュアの絶対条件だと思うんだ。その点では君もあずさも合格なんだ』
 わかばは静かに立ち上がり、本棚の方へ歩いて行く。
「私、あずさちゃんに嫌われたんだと思っていた。でも、本当はその逆で、物凄く大事にされてたんだってわかっただけで十分なんだ。だから、私もあずさちゃんの為に何かしてあげたい………あれっ」
 わかばは本棚で何か見つけたみたいに声をあげた。

***

 翌朝、あずさは一人で登校していた。その表情は疲れ切った様だ。昨晩は夢で何度もあの倒した筈のユメコワーセと戦う悪夢にうなされていたのだ。
「何で、あんな夢を」
 わかばの事を引きずっているのを感じながら苦笑いするのがやっとのあずさ。そんなあずさの頭上に黒い粒子が集まっていく。テニスボール大になったそれはギョロリと一つ目が出現、黒い翼を広げて飛び立って行く。

 近くの電柱の上に黒装束に黒マントの男がマントを靡かせ立っていた。彼の手に一つ目がとまる。
「随分と悪夢を吸い上げて大きくなったみたいだな、ナイトメアシードよ。さぁ芽を出し、禍々しい花を咲かし、人々に悪夢をばらまくんだ」
 と言いながら、男が黒い気をナイトメアシードと呼ぶ一つ目に注ぎ込むと、それはみるみる大きくなっていく。

***

 わかばは登校しながら携帯の画面を見つめていた。ストロと話しているのだ。
「昨日、いろいろ説明してもらったけどさ、まだわかんないこといろいろあるんだよ。ストロが地上にいるって事は惑星の守護はどうなってるの、結界は?」
『ああ、その事か。そもそも、私が地上に降りたって事はそれなりの準備をしたからで……』
 ストロの物言いは何か苦虫を潰したような様子だった。ストロは昨日の出来事を思い出す。それはあまり思い出したくない事だった。


 地上に侵入したマクロノース・ゼクロを衛星軌道から見ているしかないストロがそこにいた。
「とんだ失態だね、兄さん」
 かけられた声は甲高く、ストロの気に障るが、それを抑えながらストロは返す。
「向こうも必死だ。種族の未来を賭けているのだからな」
 ストロの言葉に声の主は疑うような感じにストロを舐めるように見る。それは青くヒョロっと細いドラゴンだった。ストロの弟でブルーという。