おジャ魔女どれみNEXT
第1話「どれみの彼氏」
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 校門ではどれみが緊張した面持ちで誰かを待っていた。
「…この待っている時間が緊張するんだよね」
 呟くどれみ、しばらくして背の高い3年の男の子がやってきた。そしてどれみとふたりで校門を抜けて行った。よく少女漫画であるようなシーンだったが…小竹は教室の窓からそれを不満そうに見つめていた。

 数日後、カレン女学院。
「明日から夏季長期休暇ね、藤原さんはどう過すの?」
 伊集院さちこは帰り支度をしていた眼鏡と大きなリボンが特徴の少女、藤原はづきに尋ねた。
「まだ特に予定はないわ」
「あ〜らっ、そんな事では春風さんに置いていかれますわよ」
 後から声高々に話し掛けられた。玉木麗香だ。はづきは苦笑いしながら振り向いた。そして尋ねた。
「玉木さん…どういうこと?」
「あら、ご存知無いの?春風さん、彼氏が出来たそうではありませんか。しかも3人目。とっかえひっかえですわ。さすがわたくしの永遠のライバル。そーこなくてはっですわ」
 玉木は変に嬉しそう。
「でも玉木さん、どうしてそんな事を知っているの?」
 さちこは不思議そうに質問した。
「島倉さんですわ。昨日彼女とお電話しましたの。ですから向うの情報はバッチリですわ」
 はづきは苦笑いした。その情報が何かの役に立つのだろうかと。
「それにしても、ハナちゃんがいきなり遠くに引越しちゃって…」
 さちこは何気なく呟いた。
「彼女、まぁとても良い子でしたからね。それにしても進路調査に美空中に行くとお書きになっていましたのに…卒業式の後、いきなり姿をお消しなって…藤原さん、何か知りませんの?」
 はづきはいきなり話を振られて、しどろもどろに答えた。
「えっ、あの…巻機山リカさんのお姉さん夫婦のご都合で、いきなり海外に行く事になって…」
「海外って何処ですの?わたくし、親友の飛鳥さんもアメリカに行ってしまいましたし…」
 はづきも、二人の親友の事を思って、窓の外を見つめた。そこには夏の眩しい太陽が輝いていた。

 遠近学園。芸能活動に寛容で多くの芸能人が通っている学校だ。先日、脱チャイドル宣言という写真集で、新しい一歩を踏み出した注目の芸能人瀬川おんぷもここに通っていた。
「今日は、夜にラジオの収録だけか…中途半端の時間が空いているなぁ…でも美空市まで行ってる時間は無いのよね、残念だわ」
 等と言いつつ、瀬川おんぷは一人で下校していると、校門のもの影に見え隠れする赤いお団子を見つけて、クスっと嬉しそうに笑った。
「お団子、ゲットだぜー」
 おんぷはそっと後から近づいて、どれみのお団子を捕まえた。いつもクールなおんぷが主にどれみにしか見せない遊び心だった。
「おんぷちゃーん。お仕事でもう帰ちゃったのかと思ったよ〜」
「どれみちゃん、どうしたの?」
 おんぷは尋ねる。すると、どれみはおんぷにすがり付いてきた。
「おんぷちゃん、一生のお願いだよ〜」

 喫茶店におんぷとどれみの姿があった。おんぷは色紙にサインを書いていた。どれみは使い捨てカメラでおんぷをパシッパシッ撮っていた。
「はい、どれみちゃん」
「ありがと〜、恩に着るよぉ〜」
 どれみはおんぷを拝みながら言う。
「どれみちゃん、そのしのぶさんって誰?」
 サインには“しのぶさんへ”と書く様に頼まれていた。
「…いや、その…今お付き合いしている、3年で、サッカー部で、鉄壁のゴールキーパーなんだよ…。私がおんぷちゃんと知り合いだって言ったら、頼まれちゃって…。」
「ふーん」
 照れるどれみに対して、おんぷは聞いておきながらクールに流した。
「どれみちゃん、私、思うんだけど……いや、何でも無いわ」
 おんぷはどれみの嬉しそうな顔を見て、言いかけた言葉を引っ込めた。
「今度の月曜の『隣の夕食』に私が出るの、見てね」
 どれみはうんうんと頷いていた。

 はづきは下校中、いつもの場所でいつのもトランペットの音色が聞こえてきた事に笑みを浮かべた。はづきは川沿いの空き地に入って行った。
「まさる君、こんにちは」
 そこには、汗を光らせながらトランペットの練習に明け暮れている矢田まさるの姿があった。
「…今、帰りか?」
 矢田は素っ気無く聞く。はづきは頷いて、矢田の隣に腰を下ろした。矢田もトランペットを下ろして座り込んだ。
「…どうしたんだ」
 何か考え事をしているはづきの表情を見て、矢田が尋ねる。
「…どれみちゃん、元気?」
「ああっ」
 はづきの質問に矢田は素っ気無く答えた。
「どれみちゃんが失恋記録を更新しているって本当?」
「ああっ」
「今、どれみちゃんが付き合っている人ってどんな人なの?」
「……」
「どれみちゃん、またふられるのかな…?」
「知るかよ。さっきから春風の話ばっかだな。直接聞けよ、親友だろっ」
 なぜか矢田は苛立って、そう言うと立ち上がりこの場を去っていった。
「ま、まさる君?」
 はづきはキョトンと、その場に残される形になった。

 夏休みに入って、日曜日。美空中サッカー部は関東大会まで勝ち残っていて、その日も戦っていた。これで上位に入れば全国大会に駒を進める事が出来る。小竹、木村、伊藤の美空小出身の一年3人組は、ベンチで応援に声をからしていた。
「これに勝てば、全国大会だぜ、小竹」
 木村は小竹に言う。
「ああ、今は応援しか出来ないけど、いつかは俺達の力で全国に行きたいな」
 小竹は熱い瞳でピッチの選手達を見つめる。