おジャ魔女どれみNEXT
第2話「どれみの想い」
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 おんぷはニューアルバムのレコーディングでニューヨークへ来ていた。午前中、レコーディングを一段落させたおんぷは午後のニューヨークの街をあても無く歩いていた。
「ももちゃんに連絡しておくべきだったかな…」
 そこに赤いバイクがおんぷの横を走り抜けていって、すこし前で止まった。ヘルメットを取って振り向いたその顔はストレートの長髪の日本人で、おんぷのよく知る人物だった。
「瀬川じゃないか、どうしたんだ?」
「関先生」
 おんぷは驚いてバイクに駆け寄って行った。この人物はおんぷが通っていた美空小の教師だった。おんぷが3年と4年の時の担任で、その後も親しかった。恋人との約束で、おんぷ達が卒業したら、その恋人とアメリカに行く事になっていた。
「先生、こっちの生活はどうですか」
「変わらないよ、日本と。先生として本当に教えなきゃいけない事は、何処でも一緒だよ」
 おんぷは相変らずな先生にちょっと安心していた。
「時間あるのかい?」
 突然の言葉におんぷは頷いて答えた。すると同時に先生はスペアのヘルメットをおんぷに差し出した。
「いい所に連れて行ってあげるよ!」
 おんぷは訳がわからず、メットを被りバイクの後ろに座った。

 関先生につれられておんぷがやってきた店は小さなお菓子屋さんだった。
「私の行きつけのお菓子屋だ」
 関先生はそう言って、中に入っていく。おんぷは店の看板を見上げながら、あることに気が付いた。
「ここって、マジョモンローのお店じゃ…」
 おんぷは急いで店のドアをくぐった。
「いらっしゃいませ〜」
 少し薄めの金髪を後でリング状に束ねた少女がカウンター越しに、流暢な日本語で挨拶した。まるで入ってくるのが日本人とわかっていたかのように。
「飛鳥、いつものやつ頼むよ。瀬川はどうする?」
 関先生はすでにテーブルについてくつろいでいた。おんぷはカウンターの少女に近づいて。
「ももちゃん、久しぶり。これはどういうこと?」
「おんぷちゃん、元気そうだね。私、パテェシエ修行としてこのお店を手伝っているんだよ」
 飛鳥ももこ。親の仕事の都合でニューヨークに引っ越したおんぷ達の大親友だった。
「でも、この店は…」
 おんぷの疑問にももこは厨房を指差した。そこで作業をしている金髪の女性がちらりと見えた。
「…マジョバニラ?」
「うん、元老の仕事で忙しいのに、この店を、マジョモンローがしていた事をやってみたいって言ってきて、私、手伝ってるんだ」
「そーなんだ」
「おんぷちゃん、何にする?」
「それじゃ、先生と同じやつで」
 と言って、おんぷは関先生テーブルに向った。しばらくして、ももこは紅茶と赤い鮮やかなウズマキ模様のケーキを持ってきた。
「愛しのトゥールビォン」
 おんぷは呟いた。

 金曜日、明日の全国大会に備えて、サッカー部部員は最終調整をしていた。小竹はと言うと、この一週間ずっと大河内の練習につき合わされていた。
「てぇっ!」
 小竹の放ったシュートがゴールの左上に吸い込まれる。しかし大河内の拳がそれを阻む。
「小竹、だいぶ良くなったぞ。これなら練習になる!」
 パンチングでボールを弾いて、大河内は余裕を見せる。
「なんで、先輩は俺を練習に使うんですか?」
「なんでって、お前が俺からゴールを奪いたいんじゃないかなってさ…」
「は、春風は関係無いっすよ」
「だれもどれみの事なんか言って無いよ。それに点をやる気はないけどさ」
「俺になんか恨みでもあるんすか?」
 小竹はガックリ肩を落とした。視界の隅を赤いお団子がチョロチョロしているのが見えた。
「小竹ぇ〜!先輩の邪魔しないでよぉ〜明日、大事な試合なんだよ!」
「バカヤロー、これはキーパーの練習なんだよ!」
「あんたのボールなんていくつ受けても練習にならないんじゃないの!」
「そ、そこまで言うか!」
 二人の口論に大河内はやれやれと言った感じで、どれみに話し掛けた。
「そーなんだよ。そのヘタレ何とかしてくれよ。そうだどれみ、小竹を応援してくれ。どんなへタレでも女の子の応援があればヴァージョンアップするかもよ」
「先輩!ヘタレって、そんな!」
「何で私が小竹の応援なんか…でも先輩のためだもんね」
「それじゃ、練習再開だ小竹!」
 大河内の言葉で小竹はボールを蹴る体勢を取る。
「小竹、がんばれよ。一発ぐらい入れなよ」
「お前に言われなくても!」
 小竹はボールを蹴る。
「いっけぇ〜!」
「いけ〜!」
 小竹の叫びにどれみは声を重ねる。ボールはゴールの右上の隅のきわどい所に飛び込もうとする。大河内はジャンプして手を伸ばすが僅かに届かない。しかし、ボールはゴールバーに激突。そのまま跳ね返る。
「あぅ〜」
 小竹はガックリ肩を落とす。
「やっぱり小竹だな」
 どれみと小竹のやりとりを大河内は楽しそうに見ていた。

 翌日、中学サッカー全国大会が開催された。どれみはまりなとかよこの3人で会場に来ていた。
「さすがに全国大会となると凄い人ね」
 かよこがスタンドの人を見て感嘆の声をあげる。
「ウチのサッカー部ってすごいね」
「なんたって、先輩の守るゴールはパーフェクトだからね!」
 等と言いながら会場に入ろうとした3人組は後から声をかけられた。それはトランペットの演奏にのせて語りだした。