おジャ魔女どれみNEXT
第11話「あいこの法則」
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 大阪へ向う新幹線の中に、帽子と眼鏡で変装したアイドル瀬川おんぷと二人の少女がいた。
「おんぷちゃん、いつまで怒ってるのよ〜」
 ひらひらの洋服に猫口の少女、横川信子がにたにたして言う。
「ごめんなさい。信子ちゃんが、瀬川さんを驚かせようって…」
 その隣に控えめに座っていた丸山みほが謝罪する。その姿におんぷの怒りも何処かへと消える。
「つまり、これは役作りの為の取材旅行なのね」
 おんぷは二人から聞いた話をまとめて言う。
「そーなのよ、それで、手っ取り早くモデルのあいちゃ〜ん♪に会いに行こうと言うことなのよ〜」
 信子は興奮気味に告げる。
「丸山さんは?」
「みほみほは、一応、ストーリーボード担当なのよ〜つまり場面イメージとかをみほみほのイラストで伝えるの。それであっちであいちゃ〜ん♪を取材して浮かんだ事をすぐに描いてもらおうと思って…」
「なるほどね」
 おんぷは納得した。
「…実はね…オーディションの時、監督さんの一押しはりずむちゃんだったの…でもプロデューサーやスポンサーさんはおんぷちゃんを押していて…」
 信子は言い難そうに言う。
「だいたいわかるわ…あの監督…そういう人だから。でも私には関係無い。選ばれた以上、私は自分の仕事をこなすわ」
 おんぷは淡々と告げる。
「おんぷちゃんなら、そう言うと思っていたわ…ごめんなさい、こんな話しちゃって、でも知っておいた方が良いかと思って」
「ありがと、信子ちゃん…って、丸山さん、何描いてるの?」
 おんぷは隣から聞こえる鉛筆の音にみほを見た。
「今の二人、良いなと思って」
 みほはスケッチブックを開いて、今のおんぷと信子のやり取りをスケッチしていた。

 同じ頃、あいこは土曜の休日に部活で汗を流していた。バスケットボールの同じコートの中に日高りずむの姿も見える。あいこはりずむを見つめながら、りずむの言葉を思い出していた。
“あなた達はあいかの友達になる資格は無いわっ!”
「あたしは…彼女達に何をしてしまったんだろう」
 あいこは小さく呟いた。
「妹尾さん、ボケっとしないでっ」
 2年生の部長に注意され、あいこは我に帰った。そして練習に集中する。

 おんぷ達は新大阪に到着していた。
「これからどうするの?地下鉄?環状線?」
 おんぷは信子に尋ねる。
「甘いわおんぷちゃん、費用は映画の制作費で落ちるのよっ、ここはリッチにタクシーよっ!」
 信子は怪しげに笑いながらタクシー乗り場を指さして叫ぶ。
「休日ですし、電車は混むだろうって…スタッフの人も言ってましたし、そんな所で普通に瀬川さんが乗ってたらパニックになるって…」
 みほが付け足した。そして一同はタクシーに乗り込む。助手席の信子が元気良く言う。
「おっちゃん♪、妹尾あいちゃ〜ん♪のお家までお願いっ♪」
 それじゃ、わからないだろって感じで後の席のおんぷは苦笑いする。しかし…
「かしこまりましたぁ〜!」
 運転手は威勢良く答えて、車を走らせた。
「凄い、妹尾さんって、名前で通じるほど大阪じゃ有名なんですね」
「…そんな訳無いじゃない」
 感動するみほにおんぷがツッコミを入れる。そしてバックミラーに映る運転手の顔を見つめて…言う。
「あいちゃんのお父さん…久しぶりです」
「えっお父さん〜♪」
 おんぷの言葉に信子はビックリして声を出す。
「みんな、あいこに会いに来てくれたんやな、おおきにな」
 運転手はあいこの父親の幸治だった。幸治は嬉しそうに言う。
「あいちゃんのお父さん、私達は…実は仕事で来ているのよ」
 信子はニヤリと笑いながら言う。
「でたぁ〜、嘘つき少女の信ちゃん!」
 幸治は嬉しそうに言う。
「嘘ちゃいまっせ〜」
 信子が必死にわめいているのをかわしながら幸治は後ろのみほに言う。
「えっと、それから、マンガが上手いみほちゃんかい?」
「えっ、何で知ってるんですか?」
 みほは驚いている。おんぷはみほに言う。
「あいちゃんよ」
「ああっ、いつもあいこから聞いてるで、3人とも凄い才能持った友達やって」
「…凄いだなんて」
「そーでもあるわね」
 謙遜するみほに対し、信子はふんぞり返ってみる。おんぷはそんな二人の反応を楽しんでいた。そして話は3人がここに来た理由、映画の仕事についてになっていく。
「それじゃ、本当にお仕事って訳なんか〜」
 幸治は驚いて唸ってみる。
「あいこがモデルでおんぷちゃんが演じるんか…それじゃ、その映画が完成したら見に行かなあかんな。チケット送ってぇな」
「はい。わかりました」
 おんぷは嬉しそうに言う。車は大阪を南の方へ向っていく。


 おんぷ達を乗せたタクシーは、とある中学の前に止まる。
「…南天下茶屋中学?、あいちゃんのお家って学校だったの」
「さすが信ちゃん、言う事が違うな〜12へぇあげちゃう」
 信子の言葉に幸治は嬉しそうに言う。
「この時間なら、あいこは部活で学校にいると思うてな…もうすぐ部活終わって出てくると思うで」
「ありがとうございます」
 おんぷは幸治の気遣いに礼を言い、車を降りようとする。車を降りたおんぷと信子は学校の中の様子を伺っている。みほは料金の支払いをしていた。

 午前中だけだった部活が終わり、あいこ達は帰り支度をしていた。一人足早に部室を後にするりずむをあいこは追いかけた。
「ちょっと待ってぇ…あれじゃ、何もわからへん」
 りずむは立ち止まった。