おジャ魔女どれみNEXT
第12話「ぽっぷな応援」
1/4
「絶対、大丈夫だよ、仲直りできる。がんばれっ」
 電話越しに励ましの声を送るのは春風ぽっぷ小学3年生だ。
「…お母さん、またぽっぷの相談室やってるの?」
 ぽっぷの姉で中学生のどれみは母はるかに言う。
「相変わらず、友達からは絶大な信頼を寄せられているみたいね…ぽっぷは」
 はるかは苦笑いしながら言う。
「ま〜ったく、友達とケンカしたぐらいで、相談の電話なんかかけてこないでよね…きみたかったら」
 電話を終えたぽっぷはどれみ達の所に来て愚痴る。どれみはにやにやしてぽっぷに告げる。
「何か、電話する理由が欲しかったんじゃないの、きみたか君」
「えっ」
 ぽっぷの頬がわずかに赤くなる。それを誤魔化すように、
「8時からみさき君の相談があったんだ〜」
 と言って逃げるように行ってしまった。それは何気ない春風家の風景だったが…。

 その晩、美空町を疾走する一台の紫のバイクがあった。それは何かを探している様だった。バイクは街の郊外で停車し、乗り手はヘルメットを取った。そこには端整な顔立ちの銀髪の女性の顔があった。彼女は携帯電話を取り出した。
「女王様、手がかりはまだ何も掴めていません。もうしばらく調査を続行します」
『頼みますよ、マジョリン』
 彼女はマジョリン。魔女界の女王に仕える魔女だった。そして極秘裏に何かを調べている様だが…。

 翌朝の春風家。目覚めて2階の寝室から1階のリビングに降りてきたはるかは悲鳴をあげた。それで家族達が驚いて降りてくる。
「どうしたんだっ!はるかっ…うぉっ」
 眼鏡をかけた父、渓介はリビングの惨状に言葉を失う。そこは足の踏み場も無いほど、荒らされていた。
「何これ…無茶苦茶だよ」
「お父さん、警察呼ばないとっ」
 唖然と呟くどれみの隣でぽっぷが冷静に渓介に言う。
「ちょっと、まて、何か盗まれた物は…無いか」
 渓介は確認する。はるかは急いで探しに行くが、
「…大丈夫みたい、現金も通帳もちゃんとあるわ」
 4人はほっとした。そしてどれみが冗談まじりに言う。
「きっと、ちょっとしか無かったから、呆れて盗まなかったんだろうね」
「そーだな、夏に、家の増築と車買い換えたから、今はスッカラカンだもんな〜」
 渓介は妙に和んで言う。ちなみに増築等のきっかけは、渓介の著書(釣り関係の本)がヒットして、まとまったお金が入ったからだった。また、何処を探しても侵入の形跡を無く、鍵もかかっている。壊された様な物も無かった。
「まぁ、被害は無かったし、警察に連絡しなくても良いかな」
 渓介は軽く言って、2階の上がって行った。
「でも…これって泥棒が入ったとしたら…すごい事なんじゃ…泥棒はどうやってこれだけの事を…しかも現場を密室にできたのか」
 ぽっぷは考え込んでいた。しばらくして…。
「はるかぁ〜警察に連絡しろぉ〜〜!!」
 渓介が叫びながら降りてきた。リビングの片付けをしていたはるか達は何事かと首を傾げる。
「俺のバンブーロッドが盗まれたぁ〜」
「え〜っ、お父さんの竹竿がっ」
「どれみっ、竹竿言うな、スコット・クルーガーのサイン入りで100万以上の値が付くんだぞぉ〜」
 渓介は泣きながらその価値を主張するが、家族からしてみればそれは父が大事にしているただの竹竿だった。

「美空署の山本です」
 しばらくして警察がやってきた。
「これは、最近頻発している連続窃盗犯の可能性があります…って」
 山本刑事は半分片付けられている現場を見て、絶句した。その後、何ですぐに警察を呼ばなかったんだと少し怒られた後、捜査が再開された。山本刑事は若い刑事で少し頼りなさそうだった。
「君ィ〜俺の命の次に大事な、バンブーロッドを盗んだクズ野郎を絶対蜂の巣に…って、放せっはるかーっ」
 すでに暴走している渓介をはるかはなれた手つきで連れて行く。それを山本刑事は苦笑いで見送る。
「でも、あの竹竿が無いと、お父さんしばらく駄目っぽいから、よろしくお願いします」
 どれみは山本刑事に言う。ぽっぷはリビングで考え事をしている。そんなぽっぷに山本刑事は言う。
「お嬢ちゃん、鑑識さんに現場検証してもらうから、ちょっとどいてもらえないかな」
「たぶん…指紋は出ないわ。ここは密室。これだけの完全犯罪をやってのける犯人が指紋を残していくとは考えられない」
 ぽっぷの言葉に山本刑事は苦笑いしながら言う。
「ははは…確かに、ここ数日、これと同じ様な犯行が連続してて、いずれも指紋などの犯人につながる痕跡は発見されていない。でも…それを探すのが俺達の仕事だから」
「お願いします」
 ぽっぷは警察の人たちに頭を下げる。その後、なぜか現場検証に立ち会って、警察の人達と仲良くなっていくぽっぷをどれみとはるかは苦笑いしながら見ていた。
「何やってんの…ぽっぷは」

 放課後、学校帰りのぽっぷは美空小の近くに止まっている乗用車を見つけ、おもむろに乗り込んだ。それは覆面パトカーだった。
「山本刑事、張り込み?」
 車に乗っていたのは今朝来ていた山本刑事だった。
「ぽっぷちゃんっ!」
 山本刑事は驚いて声をあげた。そして説明する。
「実はね、最近、この辺を中心に夜中、不信なバイクが走り回っているって言う通報を受けてね、調べているんだよ」
 言葉とは裏腹に山本刑事は落ち込んでいる。ぽっぷは首を傾げる。
「イカン、今は職務に集中しないとっ」
 山本刑事は首を振って言う。
「何か悩み事でもあるの?」
 ぽっぷは尋ねてみる。