おジャ魔女どれみNEXT
第12話「ぽっぷな応援」
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「うわっ、ぽっぷちゃん居たんだっ…別にたいした事じゃないから気にしないで〜」
 山本刑事は焦って言う。
「私、こう見えても、友達の相談とかいっぱい受けている売れっ子相談員なんだよ」
「へぇ…凄いね」
 山本は力なく感心する。
「だから話してみて、きっと力になれるよ」
「えっ」
 山本刑事は戸惑う。
「いつまでも、このままでいられないでしょ!男なら潔く話すっ!」
「はっ…はい!」
 山本刑事はぽっぷの迫力に思わず返事してしまった。
「実は……好きな女性がいて…恥かしながらずっと片思いなんだ」
「ず〜っとって、どれくらいなの?」
「……4年か5年」
「すごっ」
 ぽっぷは感心する。
「でもフツー、そんな長く…」
「家が隣なんだ」
「なるほど」
 ぽっぷは納得する。
「告白しちゃえば。すっきりするよ」
 ぽっぷはあっさりと言う。
「それができれば苦労しないよ…でも、最近、男と同棲しているみたいで…」
「えっ、見たの?」
「ああっ、毎朝、その男のバイクに乗せてもらって通勤しているんだ」
「なら、諦めるしか……でも諦めきれないのね」
「だから悩んでるんじゃないかっ」
 山本刑事は真剣に悩んでいた。
「一度、真剣に話をするべきじゃないかな…その男性だって、恋人じゃないかもしれないし…兄弟とか」
「それが、彼女、一人暮らしで、家族構成とかは知らないんだ」
「とにかく、告白する。それからだよ全ては、飛び込まないと何もわからないまま、悩むしか出来ないよ!そんなに長い間思い続けたんだから純粋な気持ちはきっと報われる!自信持って、全力を尽くせばきっと後悔しないで済むよ。」
 ぽっぷは力強く言う。
「ありがとう…ぽっぷちゃん。何か勇気わいてきたよ」
「実は…もう一つ気になる事があるんだ…彼女を送り迎えしている男とバイクが…さっき言った、深夜目撃されている不信なバイクの目撃証言と一致するんだ」
「でも、同じバイクとか同じ格好とか、よくあるんじゃ…」
「うん、そうなんだ。可能性の一つとしてなんだよ」
 山本刑事とぽっぷが話している車の横の道路を学校帰りの女の子が歩いていく。女の子はつま先をあげて、踵で“すぅ〜”っと滑っていく。
「えっ…何、今の」
「知らないの、ローラーシューズ、靴底にローラーがついていて、あんな風に滑れるの」
 ぽっぷの説明を聞いて、山本刑事は車を降りて、さっきの女の子を呼び止めた。
「車の通る道路では危険だから、公園とかでするんだよ」
「え〜っ」
 2年生くらいの女の子は山本刑事の注意にすねている。そこにぽっぷが来て、
「刑事さんの言うとおりだよ。それに学校にはいて来るのは禁止されてるでしょ」
「ぽっぷ先輩…ごめんなさい…でも、やっと買ってもらったから嬉しくて…つい」
 女の子は済まなさそうに言う。
「ぽっぷちゃん、君、凄いね」
 山本刑事は学校でもかなりのカリスマ性を放っているぽっぷに感心していた。そこに女性が慌ててやってきた。
「すいません、うちの児童が何か…」
 女性は美空小の職員のようだ。男性と泣きそうな児童が一緒にいたので、ビックリして来たのだろう。
「ゆき先生」
 ぽっぷはその女性の名を呼ぶ。彼女は美空小の保健医のゆき先生だった。そして…。
「ぽっぷちゃん……と、山本さんじゃありませんか」
 山本刑事とゆき先生は知り合いのようだった。
「えっ、いや、あの…これは…」
「刑事さんは、道路でローラーシューズは危ないって教えてくれていたんです」
 代わりにぽっぷが説明する。
「そうだったんですか、ありがとうございます」
 ゆき先生は礼を言う。
「いえ、と…当然の事を…」
 山本刑事とゆき先生の微妙な関係にぽっぷは首を傾げる。ゆき先生はそれに気が付いて、ぽっぷに説明する。
「山本さんは先生とお家がお隣同士なの。ところでぽっぷちゃんはどうして山本さんと?」
「今朝、家が泥棒に入られて、お父さんの竹竿が盗まれたんです。それで捜査してもらっているの」
 ぽっぷは説明した。
「そうだったの…それは大変でしたね」
 と言うゆき先生の横にバイクが止まる。
「それじゃ、私はこれで失礼します。ぽっぷちゃんも気をつけて帰ってくださいね」
 バイクの後に座ったゆき先生がそう言うと、バイクは走り出した。
「山本刑事、行っちゃたよ、ゆき先生とバイク」
 ぽっぷの言葉に我にかえった山本刑事は叫ぶ。
「しまったぁ、バイクの男に話を聞くの忘れたぁ〜」
「……あの人、女だよ」
 ぽっぷはポツリと言う。
「ほっ本当かいっ、ぽっぷちゃん!」
 山本刑事は嬉しそうにぽっぷに確認する。ぽっぷは頷く。
「ぽっぷ先輩ばいばい〜」
「うん、気をつけてね〜」
 ローラーシューズの女の子はぽっぷに手を振って帰っていく。それを見送りながらぽっぷは呟く。
「…やっと、手に入れたから、嬉しくて使いたくなる」
「えっ、どうしたのぽっぷちゃん」
 浮かれていた山本刑事はぽっぷの言葉に聞き返す。
「犯人は、お金じゃ無くて、普通の人には価値のわからないような竹竿を盗んで行った…犯人には価値がわかったから…」
「確かにあんな一品物は売ると足がついてしまう。とすると、犯人は釣好き。釣好きなら…本当の価値がわかるなら…まず使ってみたくなるはず。そう言いたいんだね、ぽっぷちゃん」
 ぽっぷは頷いた。そして車に乗り込む。