おジャ魔女どれみNEXT
第13話「ハナハナ夢中」
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 魔女幼稚園。その日はクリスマスイブ。サンタの国のサンタクロースが魔女幼稚園を訪問し、子供達にプレゼントを配っていた。子供達は大はしゃぎだ。
「みんなぁ〜良かったね」
「…私もほしーぃな…」
 みんなを盛り上げる保母のマジョピーに対し同じく保母のマジョポンはサンタの白い袋を見つめて呟いた。
「やだ、マジョポンったら、何言ってんのよ」
「やっぱ駄目よね…」
 マジョポンは俯く、すると子供達に混じってオヤジーデが黄色の小型バージョンでプレゼントを貰おうとしていた。
“ドガッ!”
 マジョポンはそれを踏みつけて言う。
「何してるんですが、オヤジーデさんっ……私ですら我慢しているって言うのに」
 となりでマジョピーは苦笑いしている。
「ハナちゃん何貰ったの?」
 ハナちゃんの友達のタコ族とイカ族のハーフであるアタリメ子が尋ねてくる。
「見せっこしよっ」
 ハナは嬉しそうに綺麗に包装された箱を開ける。そして二人は中身を取り出す。アタリメ子は子供用のたこ焼き屋さんセット。ハナちゃんは玩具のソフトクリームメーカーだった。
「アタリメ子ちゃんはそれで練習して、お父さんのお仕事を早く手伝えるようになりたいのね」
 マジョピーは感心して言う。
「ハナちゃんは…ソフトクリーム好きなのかな」
 マジョポンが尋ねる。
「うん。七回り半のを作るんのぁ〜」
 七回り半のソフトクリームは人間界留学中のハナの思い出のお菓子だった。

 その日行なわれた魔女幼稚園のクリスマス会も終わり、幼稚園から王宮内に作られた家に戻ってきたハナはさっそくソフトクリームメーカーで遊び始めた。現在ハナはここでマジョリカとその妖精ララとの3人で暮らしていた。そう、ハナは3歳にしてこの魔女界の女王だった。と言っても、3歳なので実質的な事、ほとんど前の女王に頼っている状態で、今は女王になる為の勉強をしていた。
 ハナは必死に七回り半のソフトクリームを再現しようとしていた。でも上手く出来ず、半分も行かないうちにこぼしてしまう。
「ハナや…玩具用の小さなコーンでは、七回り半は無理じゃ」
 マジョリカは優しく諭す。ハナは淋しそうに呟いた。
「どれみ達に逢いたい」
「お前等、出番じゃ〜」
 すぐさまマジョリカは叫んだ。5つの光がハナの周りに終結する。ドド、レレ、ミミ、ロロ、ニニ。ハナの母親の人間で元魔女見習いのどれみ達のお供の妖精だった。妖精達はどれみ達が魔女見習いを辞めた時に、眠りに付くはずだったが、ハナの命令(わがまま)で全員、ハナの妖精として、第2の人生を送っていた。その妖精達は主人の姿に変身する能力があった。妖精達は各々、前の主人の姿に自らを変えた。ハナの周りを5人の母親が取り囲む。
「本物に逢いたい…さっちゃんにも」
 ハナは呟く。
「効果無くなってきたわね〜」
「さっちゃんで誰だ?」
「ほら、ハナちゃんと仲良くなったはづき達のクラスメートよ」
 ララがマジョリカに説明する。ハナはどれみ達との別れを受け入れ、魔女界で頑張る決意をしたものの、やはりまだまだ子供、時々こうやって思い出しては淋しい思いをしていた。
「ハナがそんなでは、どれみ達も心配するぞ。どれみ達も淋しくない訳じゃないんだ」
 マジョリカは凄く優しい表情で言い聞かせた。もちろん淋しいのは自分も同じはずだった。
「…マジョリカ、どうしてどれみ達と自由に逢えないの」
「そ、それは…」
 マジョリカは言葉に詰まった。
「まだ、人間界と魔女界はお互いを受け入れる事が出来る基盤が出来ていないの…だから今はまだ、むやみ行き来するべきではないのよ。現状でお互いの世界が知れ渡ってしまったら…きっと大変な事になる」
 変わりにララが説明してくれた。それは前の女王の考えと同じだった。
「大変な事?」
 ハナは首を傾げる。
「お互いをキチンと理解する事無く、この二つの世界が全面的に出会うという事は…悲劇しか生み出さんのだ」
 マジョリカは難しい顔をして言う。
「ハナちゃん…魔女界に人間界の事をもっと良く理解してもらうために女王になった。でも、まだまだ女王様(前の)やマジョリカ、マジョリンやララ、元老院の魔女達の助けを借りないと何も出来ない。もっとハナちゃんが頑張らないと…」
「そうよ、ハナちゃんが頑張れば、人間界と交流できる日も近くなるのよ」
 ララはハナを元気付けるためと女王になる為の勉強に興味をもっと持たすためにわざと大袈裟に言う。
「ハナちゃん、やるよ!」
 ハナは気合に燃えていた。

 翌日、ハナはマジョリンに頼んで、魔法研究所に連れて行ってもらっていた。桃型の馬車を引くユニコーンの手綱を操りながらマジョリンは尋ねた。
「ハナ女王様…いったい、何をマジョトロンに作らせているのですか?」
「…絶対、必要なもの」
 ハナはニヤニヤ笑いながら、研究所の中に入っていく。
「さっき、完成したところじゃ、しかし試作品だから、動作に関しては完全に保障できない」
 マジョトロンは丸いコンパクトの様な物をハナに渡しながら言う。ハナはそれを開いて、中のボタンをタッチした。
「ハナ女王っ、そんな危険な物を何のためらいも無くっ」
 マジョリンは焦って止めようとしたが、すでにハナの体は光に包まれていた。そしてハナの姿は13歳のサイズになり、服装も1年前に来ていた純白の魔女見習い服になっていた。
「10歳成長することが出来るタップじゃ。でもその姿じゃ魔法が使えないから…」
「この腕のリストバンドで魔法を使うんでしょ」
 ハナは嬉しそうに腕を見せる。
「あと、これは物凄く魔力を消耗する。一日1時間が限度じゃ」