おジャ魔女どれみNEXT
第13話「ハナハナ夢中」
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「そんな物を作らせて、何をするおつもりですかっ」
 マジョリンは大声でハナに問いただす。
「ハナちゃん、魔女界を変えたい。早く人間界と交流できるように…でも3歳の姿じゃ、何も出来ない。だから…だから…」
 ハナは目に涙を溜め始める。
「な、何も泣かなくても……ハナ女王様がそこまで魔女界の事をお考えになっていたとは…」

 魔法研究所の帰り、馬車の中で3歳の姿に戻ったハナはマジョリンにお願いする。
「魔女見習いの試験を見に行きたい」
 魔女見習い、すなわち魔女界に入る事が出来る限られた人間だ。ハナは見習い試験を見学する事で魔女見習いと知り合いになって、人間界とのつながりを作りたかったのだ。しかし…。
「現在、魔女見習い試験は行なわれておりません」
 マジョリンは簡潔に答えた。
「なんでぇ〜」
 ハナは驚いて、馬車の窓から乗り出してマジョリンに尋ねようとする。
「ハナ女王、危ないですっ!」
 ハナが乗り出した事でバランスを崩した馬車を必死に立て直しマジョリンは言う。
「魔女教育委員会の中で、魔女ガエルの呪いが無くなった今、魔女見習い制度の見直しが行なわれています。その法案がまとまるまで一時、休止状態になっているのです」
「なんで?」
「今、魔女が魔女見習いを育てる必要は無いと考える魔女が多いのです」
 ハナの疑問にマジョリンは答える。
「でも、魔女見習いは、人間界との絆だって、どれみ達も言ってた…」
「はい、そう考える魔女も居ますが…まだ、どうなるかはわかりません」
「マジョリン、魔女教育委員会に向って」
「えっ」
 突然の目的地変更にマジョリンは驚く。
「マジョリン早くっ!」
 ハナは叫んだ。

 魔女教育委員会は、魔女見習い試験の試験官や、魔女学校などの職員などで構成された組織で、元老院魔女マジョサリバンが統括していた。そしてそこでは連日、魔女見習い制度の見直しについての会議で論議が繰り広げられていた。
「人間を魔女にする事になんの理由があるか、我々は忌まわしき魔女ガエルの呪いから開放されたのだ」
 議会で一人の魔女が言う。
「今まで、何人の人間が魔女になった?多くの人間は魔女になる事を拒絶する。あの魔女ガエルの呪いを解いた魔女見習い達でさえ、魔女にはならなかったのだぞ」
「そもそも、人間界と交流する事に何のメリットがあるのだろうか。我々よりはるかに劣っている人間と…」
「人間はずるがしくこく、浅はかで嘘つきだ。我々は昔、それを少なからず思い知らされたはずだ」
 魔女見習い制度に反対の魔女達の口論が続く。会議場のすみでマジョリンと一緒にこの討論を聞いていたハナは涙を浮かべ、耐えられなくなって叫ぼうとしていた。それをマジョリンが止める。
「ハナ女王、ご辛抱くださいっ」
「だって…人間はそんなんじゃ無いっ」
 ハナはマジョリンに訴える。
「人間はそんな者ばかりではない。そうでないと魔女ガエルの呪いを解く事なんて出来ない」
 賛成派の魔女、マジョサリィだった。ハナはその言葉に顔をあげる。マジョサリィはさらに続ける。
「人間との交流絶った魔女界に何か発展があったというのか、異なる物を受け入れるのは大変だ、しかし本当の発展とは、そこから生まれる物では無いのか…このまま魔女界の繁栄を行き詰まりにする権利が我々にあるのだろうか」
 マジョサリィは主に人間以外で魔女になろうとする者が行く合宿制の魔女教習所の教官魔女だった。さらに今回の会議に臨時に呼ばれていた元試験官魔女のマジョミカも口を開いた。
「今まで育て来た魔女見習いも決して無駄では無い。一人一人の力は小さいだろうが、必ず人間界を魔女を受け入れる事ができる世界に変えていくだろう。わしはそう信じている。わしらはもっと自分達が育てきた魔女見習いに誇りを持つべきじゃろう…たとえそれが今、魔女であっても人間であっても…」
 数的には賛成派の魔女は少ないようだった。マジョサリバンは議長席から静かに口を開いた。
「双方の言い分はわかった。それが魔女界の事を思っての事だともわかる。では…実際にここ数年、人間の魔女見習いに接してきたモタとモタモタはどう思う?」
 もたもたっと、二人ののんびりした魔女が立ち上がる。
「えっと〜私達ぃ〜、魔女見習いのぉ〜皆さんと…試験でご一緒できて…楽しかった〜ような気がぁ〜」
「それにぃ〜、見習い試験が無くなったらぁ〜、私達もぉ〜リストラって事になって〜しまうのかしらぁ〜それは、ちょっとぉ〜困りぃますわねぇ〜」
 二人のとろい話が続く。しかしそれはどちらかと言うと賛成的な物だった。
「ハナ女王。良くご覧下さい…恐らく今、ここが魔女界で人間界との交流を考える最前線でしょう」
 ハナは真剣に議論に耳を傾けようとした。
「私達魔女にとって、魔法は手足の様に当たり前の物です。一時的といえ、それを失ったハナ女王にはそれがおわかりになるでしょう。しかし人間は魔法を持ちません。人間界と魔女界が交流した場合、まず何が問題になると思いますか?」
 マジョリンはハナに尋ねる。
「寿命?」
 ハナは首を傾げながら答えた。それはどれみ達が魔女にならなかった理由の根底にある問題だった。
「確かにそれは問題ですが、付き合っていくだけなら、さほど問題にはならないのです。一番の問題は魔法です。魔法という強力な力を持つ者と持たない者が生まれてくるのです」
 それは今のハナには少し難しい話だったのでハナは必死に理解しようとしていたが、少し首を傾げ気味だった。