おジャ魔女わかばθ(しぃーたっ♪)
第2話「わかばの新学期熱闘編」
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 桂木わかば達が魔女界女王の計らいで魔女見習いに戻る事が出来た翌日の夕方。下校中のわかば達はたわいの無い話に花を咲かせていた。
「北岡さんは本当は優しい人なんだよ!手術代出してたじゃん」
「わかばは、ごっつう緑の肩持つねんな」
 わかばと蒼井つくしが話しているのは、日曜日の朝に放送されている特撮ヒーロー番組の話題だ。仮面を被ったヒーローがバイクに乗って颯爽と現れ、異形の怪人を倒すというフォーマットでわかば達が生まれる前から続いているシリーズである。しかし、この手の番組はマーケティング的に一年単位で番組の装い新たにされ再スタートされる事が多い。しかしながら、このヒーローは長い間、制作されない休眠期間を経て、数年前に復活したのだった。そして現代に合わせるかのようにドラマ重視でメインキャラに若手のイケメン俳優を使うなどの改革が行われ、メインターゲットの子供だけでなく大人、主にメインターゲット層の子供を持つ主婦も楽しめる内容に変貌を遂げていた。わかばは兄や男子の友達の影響もあり、ヒーロー大好きっ子で、当然のように毎週視聴していた。今年は12人のヒーローが自分の願いを叶える為に最後の一人になるまで戦うという舞台設定の中での人間関係のドラマが描かれる内容だ。
 こんな二人の会話を聞きながら龍見ゆうきは小さく呟いた。
「…蟹っていったい」
 ゆうきは以前はわかばを嫌っていた。大好きな兄ゆうまを取られた事…実際はゆうまの方がわかばにゾッコンなのだが。さらにゆうきを魔女へ導いてくれた妖精キュキュはわかばと因縁ありそうで、また、大事な人を奪われたと感じ、ゆうきはわかばにきつく当たっていた。でも、本当は友達になりたかった。しかし、これまでの事があるので一歩が踏み出せずにいた。そんなゆうきに蘇雲がさらりとしたアドバイスで、意味もわからず蟹のヒーローを応援し、わかばと意気投合出来たのだ。しかし、その蟹のヒーローは卑怯を繰り返し、たった二週で消えて行ったのだった。当然、わかばの興味はその後、登場の緑の弁護士ヒーローへと移る事になる。なのでゆうきは少し複雑なのだ。
「まったく…あなた達は。子供の、しかも男子が見る番組に」
 白木輝は呆れてそう言い、すたすたと先を歩いていく。
「…でもね、役者さんが…カッコ良いんだよね」
 わかばの影響でその番組を見てしまったかぐらがぼそっと口にした。
「わかば殿、姫にに変な影響を与えるのはやめていだきたい」
 輝はわかばに対し説教モードに入ろうとするが、大好きな事なのでわかばも負けてない。
「でもね、北岡さん、凄く背が高くてカッコ良いんだよ!」
 わかばの意見にかぐらも頷いている。尚も説教しようてする輝は一番後ろ黙って歩いていた黒岩翔に止められる。
「シロ、それくらいにしとけよ。女の全てをコントロールしようなんてキモいぜ」
「キモっ……何だと、私はただ、姫の事を思い。今の姫は真っ白で何にでも染まれ……」
 輝の説教の対象が翔に移る。作戦通りと翔はわかばとかぐらに目で合図するのだった。

 学校から続く長い下り坂を降りたわかば達は大きな川にかかる橋を渡っていた。その時、
「うぎゃー、んぎゃ」
 赤ちゃんの鳴く声を聞いた。その声は力無く必死だった。
「…赤ちゃん?」
 ゆうきはそう言って、声の出所を探った。
「…この下だ!」
 翔はそう言って、河原から橋の下へ走って行った。わかば達もそれに続く。橋の下の暗がりにバスケットが無造作に置かれているのが見えた。わかばは嫌な予感がした。
「まさか…」
 予感は的中。バスケットの中で生後半年ぐらいの赤ちゃんが泣いていた。つくしも悲しそうに呟く。
「…この状況は間違いなく、捨てたんやろな」
「この子、ミルという名前みたい」
 かぐらはバスケットにネームプレートがついているのに気が付いた。
「で、これから、どうするのだ?」
 輝は心配そうに呟いた。
「警察に預けた方が…」
「そうだな…」
 ゆうきと翔が警察を呼ぼうとした後ろで、つくしとわかばが不気味に笑っている。
「フフフフフフ…ゆうきはん、早まっちゃイカン!」
「私達には魔法がある。この子を助ければ、クリスタルシードになるかも〜」
 と言いだす。ゆうき達は少し呆れるが、すぐに自分達にはこの子を助けられるかもしれない魔法があるということを自覚する。6人は赤ちゃんを連れて、一旦、魔法堂を目指した。

***

 わかば達が魔法堂に来た時、店は閉まっていた。合鍵を使い、扉を開けて店内を確認したわかばが報告する。
「マジョミカもキキも居ないよ〜」
 まずは赤ちゃんの状態を良くしなくてはと考え、やはり目上の人生の先輩に頼ろうとしたが、不在だった訳だ。
「仕方ないな。プレーパステル クレパスピービット ミルクよ出てきて!」
 魔女見習服にお着替えしたゆうきがスウィートポロンMを奏でた。魔法玉の光がポロン先端に結集し輝き、哺乳瓶に入ったミルクが出てきた。ゆうきは哺乳瓶を手にバスケット内で横になっているミルに飲ませる。それを覗き込んで、かぐらは嬉しそうに言う。
「やっぱりお腹が空いていたみたい…ぐびぐび飲んでる」
「いつから、飲ませてもらってないのかな…」
 心配そうに言うわかばの言葉に一同は沈黙する。
「…今は、ウチらに出来る事したるしかないんちゃう」
 つくしの言葉にわかばは頷いてお着替えし魔法を発動させる。
「ポリーナポロン プロピルピピーレン おしめよ出てきて!」
 わかばは魔法でおしめを出した。
「…替えてあげた方がいいと思ったから」
「そうね」
 ゆうきは幾分ご機嫌になったミルのおしめを替えようとしたが…。
「どうするの?」
 ゆうきはやり方が分らない。他の5人も首を振る。経験がないのだ。中途半端な状態で放り出されたミルが泣き出す。
「ああっ、こうなったらぁ〜 ポチットナーポ ピコッチキララーレ おしめよ替われ!」
 えいやっと、つくしの魔法でおしめが一瞬で交換された。
「…魔法って便利だけど、何か引っかからない?」
 考え込みながらわかばは呟いた。しかし、つくしは話を先へと進める。
「仕方ないやろ、それより、どうやってこの子の親を探すん?」
 6人は考え込んでしまった。しばらく考えた後…。