おジャ魔女わかばθ(しぃーたっ♪)
第2話「わかばの新学期熱闘編」
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「“アレ”をやってもらうしか」
 輝はそう言い、わかば達を見つめる。
「…アレが一番妥当ね」
 ゆうきも続く。
「アレするか」
 つくしはポロンを構えた。
「…アレ」
 かぐらもつくしがするようにポロンを構える。
「アレを使おう!」
 わかばは一人、店の奥へ入っていった。翔はわかばを呼び止めるが間に合わない。
「おいっ、わかば?」
「お待たせ〜」
 しばらくして、わかばはトイレットペーパーをたくさん抱えて戻って来た。
「どないすんねん、それ?」
「“ペーパー占い”で探すんじゃないの?」
 かぐら達はズッコケた。どうやらわかばだけ違う事を考えていたようだ。

***

 魔女ガエルのマジョミカはスコップに乗り魔法で虹宮上空を飛び回っていた。そんなマジョミカに妖精のキキが合流した。
「ミカ〜、見つかった?」
「いや、まだだ…一体どこに出現すると言うんじゃ!」
 マジョミカは焦っていた。
「…あの子、肝心な事、言わなかったの?」
「そこまで、憶えてはいないだろ」
「そーよね、普通は…」
 キキは納得して、再びマジョミカと別れ、何か探しに飛び立っていく。
「…」
 マジョミカは不意に優しく悲しい表情をしたのちに再び捜索に戻る。

***

「ポリーナポロン あざやかに〜」
「ポチットナーポ なめらかに〜」
「プレーパステル ひそやかに〜」
「ピークレシェンド かぐやかに〜」
 4人は順に呪文を詠唱して、ポロンを重ねた。光が重なる。
「マジカルステージ! ミルちゃんのお母さんを探して!」
 光が弾けた。光から小鳥が出てきて、はいはいしているミルのお尻にとまった。
「どういう意味?」
 かぐらは首を傾げた。
「この鳥が、ミルの母親の所へ連れて行ってくれるのでは…」
 ゆうきはそう言って、小鳥を見つめた。小鳥は羽ばたき、店内を飛び回る。捕まえようと必死なわかば達を尻目に小鳥は二階に続く階段のスペースに入ってしまう。顎に手を当てたゆうきがもったいぶるように呟く。
「私の推理によると、ミルの匂いを確かめた鳥を追えば母親が見つかるということになるわ」
「犬じゃ無いちゅーねん。それにいつからあんた探偵になってん」
 すかさずつくしがツッコミを入れるが、ゆうきも反論する。
「これでも、探偵になるための勉強はしてるのよ。独学だけど」
 趣味の域を出ないのだが、ゆうきは探偵に憧れ、まねごとをする時があった。実はゆうきの魔女の師、怪盗魔女のマジョシルフとの出会いも探偵のまねごとがあったからなのだ。そんな二人のやり取りを聞きながら二階に駆け上がったわかばとかぐらは驚いて必死な叫びを上げるのだった。
「そんな事しちゃダメぇ!」
 小鳥はマジョミカ愛用の古びた鏡台の引き出しを開け、中から取り出したルージュを足で押さえ付け、クチバシで容赦なく突いていた。黄色のクチバシに紅色が塗り重ねられていく。
「マジョミカのお気に入りの口紅が…」
 魔女ガエルなので、あまりつける事は無いのだが、元の姿に戻った時にと大切に置いているモノだと、1番弟子のわかばは知っていたので焦る。
「…マジカルステージだよね?」
 かぐらはそう呟き、心配になってくる。そこにつくしとゆうきが部屋に入ってきた。ゆうきと目が合った小鳥は、今度はゆうきの方へ飛んできた。
「何故?」
 小鳥は疑問符を浮かべるゆうきの頭の上でくつろぎ始めた。
 一方、一階では、輝がミルを抱きつつ寝かしつけていた。
「お前、そんな特技が」
 翔が意外そうに言う。
「誰かが見ていてやらねばならんだろう。それに子守は慣れている」
 最後のは嫌味だった。翔はしかめた顔を戻しつつ言う。
「でもよぉ、俺ら、そろそろ限界じゃね」
 かぐらのパートナー妖精であるシロとクロ。彼等が魔法で変身したのが輝と翔なのだ。二人がこの姿を維持するには常に魔力を消費しなければならず、回復無しには半日が限界だった。
 2階から、頭に小鳥を乗せたゆうきが降りてくる。その後ろをかぐらとわかばがついてくる。階段を降りきったかぐらに輝は寝息をたてるミルを預ける。
「輝君、凄いっ」
 ミルを寝かしつけた輝にわかばは感激するが、翔が口に指を当てて静かにしろと促す。ミルの寝顔を確認したわかばは申し訳なさそうに頭をかいて見せた。
「姫、我等、そろそろ限界なので、後を頼みますぞ」
 言いながら、輝の体が淡い光りに包まれ、白ウサギのような妖精体に変わる。翔も同様に黒ウサギに変わり、二匹はかぐらの髪を束ねている二つの丸い髪飾りと同化した。

 一人、まだ2階に残っていたつくしはグチャグチャになったマジョミカの口紅を見つめていた。
「……マジョミカ、キレるやろな」
 下の階に降りたつくし。ミルを囲んで黙り込んでいる。あの小鳥は未だゆうきの頭の上。それを見たつくしは告げる。
「このままじゃ、埒がアカン。とりあえず、街に出てみーひん。マジステの意味もわかるかもしれん」
「確かに、このまま、魔法堂にいてもミルちゃんのお母さんが見つかるとは思えないものね」
 ゆうきはそう言って賛同する。こうしてわかば達は、寝ているミルを抱いて、街に出た。

***

 街の中央にある商店街を歩いていたわかば達は、そこで幼なじみの川井かえでに出会った。
「わかば〜、何してるの?」
 と言いながら、かえでの視線はゆうきの頭だった。
「いやぁ〜、なんと言うか…」
 わかばが説明に困っていると。
「ねぇ、つくしとわかばが仲いいのは知ってるけど、…いつ、転校生とも仲良くなったの?」
 かえでは疑問に思った。昨日来た転校生のかぐらがわかばと一緒に行動していたからだ。幼なじみでわかばの内気さを知っているかえでだからの疑問だった。
「はははは…、わかばもやるときゃやるちゅーことや」
 つくしが誤魔化した。まさか魔女界で以前から知り合っていたとは言えないから。
「ふーん?」
 かえでは納得したようなしないような…。
“かえでちゃん、勘がいいからなぁ…”
 わかばは魔法の事がバレないか不安だった。
「まぁ、いいや、私は行くね」
 かえでは行ってしまった。どこか気を使っている感じもし、わかばはますます不安になってしまう。