おジャ魔女わかばθ(しぃーたっ♪)
第3話「部活をしよう」
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 放課後、わかば達はクラブ巡りをしていた。今は剣道着を着て剣道場の隅に正座していた。
「この防着…匂いがキツい」
 つくしが小さくもらす。4人の目の前では、デモンストレーションの試合が始まろうとしていた。
「しすい先輩、お手合わせ、お願いします」
 ねおんが一礼し竹刀を構えた。
「ねおんさん!勝負!」
 6年で剣道部の部長である“明鏡しみず”は気合いを込めた。
「ゆうきちゃん、部長さん、“しみず”さんだよね、“しすい”さんって?」
 わかばはゆうきの耳元で尋ねる。
「“しみず”は剣士としては弱いので、剣を握る時だけ“しすい”って名乗っているんですって」
「へぇ」
 わかばは納得する。試合は、ねおんがしすいに上段から仕掛ける。しすいはそれをかわして回り込むが、ねおんはそれを知っているかのように体を反転させる。
「さすが、音を操る威音(いおん)忍術の継承者。動きは全てお見通しね!」
 しすいは軽く笑った。
「でも!」
“ばぁーんっ!”
 音だけが響いた。
「…参りました」
 ねおんが腕を押さえて言う。
「…何?…見えた?」
 つくしが呆然としている。
「…明鏡先輩が仕掛けた所までは見えたが、竹刀が何処にヒットしたかまでは」
「…レベル高すぎだよ」
 ゆうきとわかばも驚きを隠せない。しすいは面を取って、ねおんに言った。
「音から動きを予測できても、対応できないくらいの速度で攻撃してみたけど、どうかしら」
「…さすがです。先輩…これからお願いします」
 二人は握手をかわした。そして、しすいはわかば達に問う。
「あなた達も入部希望かしら…」
 次元の違いを肌で感じてしまったわかば達は首を横に振って、拒否してしまった。

***

 次にわかば達が向ったのは家庭科室。
「ようこそ♪料理部へ」
 出迎えてくれたのはわかばの親友の川井かえでだった。
「かえでちゃん、ここなの?」
「わかば達もどう?」
 頷きながら、かえではわかば達を誘う。
「ウチ等…パティシエ目指すしな…でもウチ、科学部も捨て難いし」
 つくしは難しい顔しながら言う。
「ごめんね、私も、未確認生物研究のために生物部を考えているの」
 わかばの答えに、かえでは不思議そうに尋ねる。
「だったらなんで、クラブ巡りしてるの?」
「ゆうきちゃん達、まだ決めてないって言うから、一緒にね」
 かえで“ふーん”という感じでわかばの後の2人を見つめていた。

 第1理科室。つくしが嬉しそうに中に入っていく。
「蒼井さん、来てくれましたね」
 香川先生がつくしを出迎える。
「ウチは、ここに入部するから、ほなな」
 つくしはわかば達に手を振って、中に入っていく。
「科学部だよ」
 わかばはかぐらとゆうきに言う。二人は中を何となく覗いて、ちょっと無理そうな表情を見せている。
「この隣が生物部」
 わかばは二人を隣の第2理科室に案内した。
「わかばと一緒なら……私も、行く所、特に無いし…別に生物部でもいいわ。顧問が弥生先生だし」
 ゆうきは興味なさ気に生物部入部の意思を示した。
「みんなが行くなら私も…」
 かぐらも同意する。
「そーなの?」
 わかばはそれで良いのという感じに呟いた。

***

 剣道部ではみさきが来ていた。
「しつこいなぁ、私、ここに入部しちゃったよ」
 ねおんがみさきに言う。
「ううん、違うの、龍見さんがここにいるって聞いたから」
「ゆうきなら、他の所に行ったよ」
 それを聞いて、みさきは走って行った。

***

「先生、感激ィ〜、生物部、人気が無いから」
 弥生ひなた先生は感激のダンスを披露していた。
「6年も僕一人しかいないから、下手したら廃部かもってね」
 入部の書類を配りながら、部長の6年生の十曲という名の男子が言った。わかばとゆうきとかぐらは黙々と書類に書き込んでいた。ふと顔を上げたゆうきは、壁に生物部の活動予定表なる物が目に入った。
「…何?、6月の予定…“牛の内臓と眼球の解剖”ですってぇ!」
 ゆうきは大声を出した。
「えっ!?」
 かぐらも驚いている。ひなたは素早く、書き上がったわかばとかぐらの入部届を奪い取って、
「2人の入部を受理します。龍見さんも早く書いてね」
「え、えっと…私…やっぱり無理っ」
 ゆうきはそう言って出ていった。
「ちぃ!1人逃がしたか…」
 ひなたは悔しそうに廊下を見つめている。
「…私も」
「月影さん、何か言いましたか?」
 逆光でひなたの顔は見えないが、凄いプレッシャーを感じて、何も言えないかぐらだった。

***

 ゆうきは校舎の屋上でグランドをぼんやりと眺めていた。
「…部活が義務だなんて…帰宅部で充分なのに」
「それはもったいないと思うんだけど…」
 ゆうきは背中から声をかけられた。振り向くと…。
「田所さん」
「名前、覚えてくれてたんだね。“みさき”でいいよ」
 みさきはゆうきの隣に立ち、グランドを見つめた。
「みさきさんは部活決まった?」
「部活はあなたと一緒で、入りたいところが無くて」
 二人はグランドのサッカーコートを見ていた。
「いつからだろう…小さい時は、男子も女子も関係なく、あのボールを追いかけていた。でも、今は一緒にはできない。男子は妙に恥しがって…ゆうきさんはどうだった?」
「別に」
 みさきの問いに素っ気無く答えるゆうき。
「別にって……おかしいと思わない、私達で何とかしたくない?」
 みさきはちょっと感情的になる。ゆうきは突然、話が変な方向に入っているような気がした。
「先週、商店街の先の公園で、子供にサッカーボールを蹴り返しているあなたを偶然見て…。凄いテクだと思った。…私と、この学校に女子サッカー部を作らない?男子になんか負けない!」
 みさきは熱い想いをゆうきにぶつける。ゆうきは言いにくそうに言う。
「私は体力作りの為にサッカーをしていただけで…」
「そんなのもったいない」
 みさきはそう言って、手を合わせた。
「お願い!ゆうきさん」