おジャ魔女ひなた91
第2話「信じる事が…」
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 ゆきに連れられ戻ってきた魔法堂で、ひなたは魔女ガエルのマジョミィナの入れた紅茶を口にしていた。そこではお菓子が広げられて、ティータイムとなっていた。
「あんたピュアレーヌかい?」
 マジョミィナの問いに頷いて答えるゆき。
「はい。私の名は雪枝ゆき。今はまだ詳しい事は話せませんが、私の任務は残り6枚のVバットカードを封印する事です」
 ゆきはさっき、ひなたの胸から取り出した黒いカードを見せた。ゆきの隣に座っていたひなたはイマイチ話がわからずキョトンとしている。
「噂に聞く上級のバットカードね。あなた…ただ者じゃ無いみたいね」
 驚きを隠せないマジョミィナの妖精のキュキュ。マジョミィナは目が点状態のひなたを優しく見つめて楽しそうに言う。
「うちの魔女見習いはまだなりたてだから、説明しないといけない事がたくさんあるわね」
「そうですね」
 ゆきは頷いて、ひなたに噛み砕いて説明する。
「バットカードはこの世の災いを封じ込めたカードです。昔、魔女界に保管されていたのですが、ある魔法使いによって盗み出され、その魔法使いは捕まえる事ができましたが、バットカードは人間界に流出してしまいました。バットカードは物にとり憑いて、その周りに不幸をばら撒きます。そのバットカードをとり憑いた物から取り出す力を授かった魔女の称号がピュアレーヌなのです。今、魔女界では多くのピュアレーヌ達がバットカードの回収作業にあたっていて、一刻も早く全てのカードを回収すべく頑張っています。そして、さっきひなたちゃんの体から取り出したのが、Vバットカードと呼ばれるカードです」
「Vバットカード…私はそれに…」
 ひなたは呟いた。ゆきはそれを聞き留めつつ話を続けた。
「バットカードより、大きな災いを封じているVバットカードは全部で13枚存在します。そしてその13枚の背後には、長い年月封印している内に、少しずつ漏れていった災いが黒い影となり人格を持ってしまったバットカードマスターというカードが居て、Vバットカードを操っています。この為、Vバットカードの回収は困難なのです。私はVバットカード専門に回収する事を女王様より命じられたピュアレーヌなのです。また先日、半数の6枚Vバットカードを封印し、ついにマスターをこの街に追い詰めたのですが、逃げられてしまいました。マスターはまだこの近辺に居ると考えられます。そこで、ここの魔法堂に協力を要請したいのです」
「ええ、構いませんよ。その間、あなたもこの店の一員という事ですね」
 マジョミィナは要請を快諾した。ゆきは嬉しそうに頷いて、赤とピンクのツートンカラーのノートパソコンを取り出した。
「何ですか?」
 ひなたは珍しそうに覗き込む。開いたノートパソコンの液晶画面では、起動プログラムが流れていた。
「ピュアレーヌパソコンです。これにカードを封印していくのです。紹介します。この中でカードの番人をしている…」
『おおっ、二日ぶりの起動ですよ〜。おやおや〜ここは何処かの魔法堂ですね〜、我が主のピュアレーヌとお子ちゃまと魔女ガエル…ろくなのがおりませんね…まったく。おおっ、あっちにセクシーなおねーさんがっ』
 パソコンの画面に映っている黄色い2頭身に腹巻姿の生物がキュキュを指差して騒いでいる。
「何、このオヤジっ」
 キュキュは生ゴミを見る様な目で見ている。
「自己紹介が遅れました、フロイライン〜♪。ワタクシはアレキサンドル・T・オヤジーデ。ゆき様からご紹介がありました、カードの番人を務めている者でございますです、はい」
「オヤジさんって、そこに住んでるんですか?」
 ひなたは尋ねる。
「オヤジではありません、オヤジーデっ。これでも魔法使い界では有名な占い師なのですよ。誰も好き好んでこんな所に住んでいる訳ではありませんよ」
「彼は…バットカードを盗んだ罪を償う為にピュアレーヌパソコンに封じられているのです」
 ゆきはサラッと言う。
「ああっ…それを言われるとお終いです〜」
 オヤジーデはがっかりとし、その後、キュキュとひなたから非難を受けまくる。マジョミィナは賑やかのが嬉しいようで微笑んで見せていた。

 オヤジーデ苛めも一段落し、ひなたは尋ねる。自分の状況説明が何も無かったからだ。
「私はこれから、どうすれば良いの?」
「言った筈よ、あんたは修行して魔女になる。そしてマジョミィナを元の姿に戻すんだ」
 キュキュは突き放すように言う。ひなたはそれにムキになって答える。
「それはわかってるよっ!…もっと具体的な事を教えて欲しいのっ」
 マジョミィナは小さく跳ねながらひなたの正面にやってくる。そしてひなたの目を見つめて言う。
「許しておくれ、説明が遅れて…」
 いきなり謝られて、ひなたはすまないような気持ちになって、頭をかいてみる。マジョミィナは話を続けた。
「人間が魔女になるには、まずはそのタップとポロンで魔女見習いとして修行し、魔女界の進級試験を受け、一級まで合格し魔女の証である水晶玉を手に入れる必要がある」
「へぇ〜」
 ひなたは思わず口にする。魔女の世界にこの様な段階を踏んだ形式があるとは思っていなかったからだ。
「普通、魔女は水晶玉で魔法を使うのだが、それを持たない魔女見習いはポロンで魔法玉を消費して魔法を使う。つまり魔法を使うには魔法玉を稼がないといけないのだ」
 ひなたの周りを飛びながらキュキュが説明する。
「稼ぐ?」
 ひなたは首を傾げる。